アパグループ第4回「真の近現代史観」懸賞論文受賞者発表 最優秀藤誠志賞
高田 純
札幌医科大学教授 放射線防護学
誰一人核放射線で死んでいないし、今後も健康被害を受けない低線量との結果が見えたはじめた最初の4月初旬の福島現地調査以来、住民の線量検査をする科学者の私と人道支援する仲間は何度も福島を激励に訪れました。国内は、似非専門家たちが煽る放射線恐怖の報道を受けて集団ヒステリーに陥り、原子力発電停止による電力不足、東北の農水産物、そしてハイテク産業も風評被害を受けました。本論文の藤誠志賞の受賞は、そうした虚構の放射線災害の真実を国内外に伝え、福島復興の道筋を開く大きな力となるはずです。大変うれしい。ありがとうございます。
菅直人が核の”危険”で火を焚き、左翼リベラルと日和見の学者が手伝い、一部だが多くのメデイアが炎上させ、心理的な火あぶり状態となった福島県と放射線集団ヒステリー日本。震災の五ヶ月後にも、福島のセシウムは広島核の百六十八倍と無意味な数字で、新聞は不安を煽ったが、昭和二十年にセシウムで死んだ人は一人もいない。三十年の長半減期の核種からの線量は無視出来るほど少ない。放射能は半減期に反比例するので、秒、分の短い半減期の核からの放射線が危険だったのだ。こうした核爆発災害のイロハも知らない原子力安全・保安院の話を鵜呑みにするようでは、新聞のレベルが低いと言わざるを得ない。
現代史では、広島の自虐に満ちた碑文問題に象徴されている通り、常に、核の現実から日本国民の目をそらし、欺いてきた”平和運動”により、国政が翻弄されてきた※1。今回の福島核事象でも、同じこととなっている。すなわち誰一人として健康被害を受けない放射線問題の不安を煽り、国と世界の進むべき方向を負の方向へ向けさせる力学が働いている。
広島・長崎から六十五年を経過し、エネルギーと医療で、核放射線技術の先端を走る国が、今世界の笑いものになろうとしている。これまで何も起きていないドイツとイタリアは、第二次世界大戦と同様に、先に降参している。国民よ目を覚ませ、強い心で国難に対処せよ!福島では、放射線と放射能で誰も死んではいない。復興に向けて、放射線防護学に基づいた正しい対処をすべし。
菅に止められた原子力発電所を、早急に稼働させて、国のエネルギーの土台をまず整えなくてはならない。それが、フランスをはじめとしたIAEAに結集する責任ある国家の立場である。その上で、大津波対策を短期、中期、長期で打て。今が、世界一の核エネルギー安全技術を開発する絶好のチャンスである。ピンチの後に必ずチャンスはくる。諦めたら敗北しかない。平成の国民は負けない。
本論文では、戦後の反核平和運動の嘘を証明しつつ、福島の真実=健康被害が生じない低線量事象を示し、復興の道筋を示す。
一九八六年四月二十六日ソ連邦ウクライナ共和国チェルノブイリでは、原子炉内の核反応が暴走し爆発したため、運転職員や消防士らが急性放射線障害を受け三十人が急死した。一方、二〇一一年三月十一日、福島第一原発では巨大な地震マグニチュード九・〇のS波が到達する前に、核分裂連鎖反応が自動停止したため、原子炉の暴走は無かった。そのため急性放射線障害となった職員はいなく、その原因での死亡も無かったのである。日本で暴走したのは、自身の総理大臣の席を死守するために政治暴走した菅直人だけだ。官僚機構を使いこなせない総理は、当然のごとく日本の放射線防護力、緊急被曝医療体制を使いこなせなかった。そればかりか、素人判断で、福島県民を苦しめ、国民の不安を煽り、国内外の風評被害の原因となる話題を振り撒いた。その人的・経済的被害は甚大である。国を守る心ない”総理”が、地震被害の増幅器となった。全国の電力不足も、その影響のひとつである。
筆者は、世界の核災害地を調査してきた放射線防護学の専門科学者である。核エネルギーとは何か、核の脅威とは何か、核被災地はどうなったのかと、自問しながらの調査を続け、多数の意外な事実に気が付かされた。九・一一米国を狙ったテロ以後、日本の国民保護のための核防護研究を中心に取り組んでいる。
今回の三・一一東日本大震災後の福島核事象も、現地調査を、四月上旬を皮切りに、六、七、八月と行った。チェルノブイリ原子炉事故とは全く比べものにならない低線量で、しかも福島県民にさえ健康被害はないとの結論を早々に引き出している※2。それは、日本の軽水炉の高い耐震性能、強い格納容器と、火災の原因となる黒鉛がなかったことにある。東京電力の場合、津波対策に不備があった模様だが、日本の技術陣ならば、大津波の防護対策技術を今後必ず開発できるはずだ。そのヒントは、より震源に近かった東北電力女川原子力発電所の生き残りの検証から得られる。
一方、菅政権を震源とした国内の知的・心理的大攪乱が起こった。しかも日本社会は容易にその影響を受けてしまった。広島・長崎があっても日本人は何を勉強してきたのか。戦後六十五年以上も経って、広島・長崎の核の科学も理解せず、福島の放射能でアレルギー反応を起こしているのが平成の日本。広島の自虐史観に満ちた碑文がある限り、真っ当な精神にはならない。真の驚異を直視し、現実的な対策を打たなくては駄目だ。
広島・長崎の時は復興を目指して頑張った。でも福島は復興どころじゃない、逃げろと。何もプラスのことを福島県民にしない菅政権は、自分の故郷を捨ててどっかへ行けと言った。それに合わせて意図的に国民の恐怖を煽るようなメッセージを発信する一部の知識人がいる。国民に信頼されていない総理にぶら下がった御用学者たち。どちらも、北朝鮮拉致事件や九・七尖閣事件など国家問題に沈黙し、広島・長崎を遥かに超えるシルクロード楼蘭周辺での未曾有の核爆発災害を隠ぺいしてきた勢力である。これが、広島・長崎・第五福竜丸事件後に、台頭した、偽装反核平和運動であり、戦後の日本を歪ませてきた。
隣国中国は核武装を完成させ、いつでも我が国に向けて核ミサイルを撃てる状態にある。一メガトン威力の核一発で、東京は壊滅し、三百五十万人が死亡する※3。その核を二百七十メガトンも実戦配備し、吉林省など東側に日本や台湾に向けてミサイル基地を配置する中国。この日本列島の真上にぶら下がったダモクレスの剣を話題にもせず、NHKをはじめ朝日、毎日などの新聞は、三月十二日以来、誰も死なない低線量の福島核事象を大騒ぎした。
昨年の九月七日、尖閣諸島海域で起こった中国漁船の衝突、政府は接触事故という風に片付けようとしたけれども実は体当たりだった。中国の領土、領海拡大政策、まさに二十一世紀の帝国主義国家。これを隠蔽しようとしていたのが何故か国を守らなくてはいけない日本政府だった。最大の脅威に沈黙する政府に加え、重要なポイントはメディアの隠蔽にある。隠蔽に加担していない産経新聞などは少数派だ。
私は大学院博士課程時代の広島黒い雨の調査を原点に、チェルノブイリ原子炉核分裂暴走災害、カザフスタン・ビキニ・楼蘭での核爆発災害を調査した※4。そのなかで世界最悪の核災害は、NHKが長年古代ロマンのみを報じてきた楼蘭周辺のシルクロードである。
広島の核の千三百七十五発分に相当する二十二メガトンを炸裂させ、兵士も含むウイグル人たちが殺されている※5。地表核爆発で環境に飛び散った放射能の総量は、チェルノブイリの八百万倍。少なく見積もっても十九万人が死亡、漏えいした機密文書によれば、七十五万人が殺されている。天山山脈の北側に位置するカザフスタン国境の街は爆発地点から千kmも離れていたが、少なくとも二回、中国からの核の砂によって百ミリシーベルト以上の線量を受けている。これは、カザフスタンと筆者の一致した調査結果である。
昭和三十九年十月の東京オリンピックの開催中に始まった中国の核爆発は、平成八年まで続いた。NHKの大型番組に誘導されてシルクロードを観光した日本人は二十七万人と推計される※6。日本人旅行者たちの被害は甚大にちがいない。今、少しずつだが、その情報が筆者の行うシルクロード科学プロジェクトに寄せられている。この時から、NHKは中国の国家犯罪の隠蔽に加担するようになった。放送法違反行為だ。
その間、日本にもその核の黄砂を降り続いた。セシウム、ストロンチウムが偏西風に乗って日本列島に降り注ぎ、外部被曝のみならず、飲料水の他、野菜、牛乳、米からの食物連鎖で、全国民が顕著な内部被曝線量を受けた。筆者は、ストロンチウムが骨格に沈着する内部被曝の研究を文部科学省の科研費を受けて、平成二十一年から三年計画で、この種の研究をしている。
筋肉に蓄積するセシウムの人体中での実効半減期が百日であるのに対し、骨格中のストロンチウムの実効半減期は十五年と長いのが特徴である。多量に取り込んだソ連テチャ側での事例では、白血病が多発している。昭和四十年代生まれと、その時代に育ち盛りの中高生だった日本人の骨格に、顕著な量の放射性ストロンチウムが沈着していることが、長年の放射線医学総合研究所の解剖死体の骨の分析から知られている。その放射能の値から筆者が、内部被曝線量を計算すると、四千km離れた日本人は一~七ミリシーベルトを受けている。
反核運動や左翼運動を盛にした団塊世代の背骨や、今の四十代の骨格には大目にメイドインチャイナの放射性ストロンチウムが沈着して、彼らの骨髄が毎日ベータ線被曝している。ただし、そのベータ線で白血病にはならないと、私は判断している。数ミリシーベルトの線量では健康に影響を与えないのだ。世界一の長寿国が数ミリシーベルトの骨髄被曝が問題ないことを証明している。
私はビキニ第五福竜丸事件のあった昭和二十九年に生まれた。こどもの頃、雨が降ると濡れるな、頭が禿げるぞと盛んに言われたが、だれも禿げた友達はいなかった。福竜丸船長は、米国の核実験海域の場所を知っての上で、禁止海域の境界に近づき、核の灰を受けた。とんでもない危険行為だった。乗組員二十八人全員がベータ線熱傷を受けた状態で、母港の焼津に戻った。肝炎ウイルス汚染した売血輸血の治療を受けた彼らは、十七人が肝臓障害となった。そして最も症状の重い無線長の久保山愛吉氏が亡くなった。同様な被災となった現地のマーシャル諸島を調査した私は、現地で急性肝炎になった被災者がいないのを知っている※7。日本の原水禁運動・反核運動の源流には嘘があった。
武田邦彦氏は、被災住民の年間限度を二十ミリシーベルトに政府が上げたことを問題視している。そして、「小児がんは、チェルノブイリの事故では、被曝の四年目から出ています」と言う※8。これは明記されていないが、甲状腺がんを指している。あたかも、その程度の低線量で発生しているような誤解を読者に与えているのは大問題だ。
現地での甲状腺線量は、最大五十シーベルト、多くが数シーベルトを受けたために、こうした病気が発生したのである。ベラルーシでは、小児人口十万人年間あたり、四年後に四人、九年後に十三人と最大になり、その後減少に転じた。
福島の場合、県民の甲状腺線量は、チェルノブイリに比べ、一千分の一から一万分の一以下と低い。私が検査した六十六人の最大が八ミリシーベルト。線量から判断すると、福島県民の甲状腺がんリスクは年間一千万人あたり一人以下となる。しかし福島県の人口は二百万人なので、だれも、この低線量で甲状腺がんにならない。素人知識で福島県民や国民を脅すのもいい加減にせよ。
全身の外部被曝では、チェルノブイリ三十km圏内からの避難者の最大線量は、七日間で七百五十ミリシーベルトの高線量を受けていた※9。それに対して、福島二十km圏内からの緊急避難者たちの線量は、当時の屋外空間線量率の推移から想像して、ミリシーベルト程度とチェルノブイリの百分の一以下だ。だから、チェルノブイリの健康被害を持って、福島県民やそれ以外の日本国民の健康影響を脅すことは犯罪に近い。
女性の卵巣の放射線影響は六百五十ミリシーベルト以上で起こることがわかっている。だから、チェルノブイリ三十km圏内からの避難者は厳しい状態にあったのは事実だ。しかし、そうしたリスクは福島にも他県にも絶対ないと断言できる。
私は、年間二十ミリシーベルトに達する福島県民はほとんどいないと考察している。筆者自ら行った調査時の個人線量計の積算値から推定する現地の三十日間線量は、四~五月、六~七月で、それぞれ、二十km圏内と周辺が一・〇ミリシーベルト以下、会津~福島が〇・一〇ミリシーベルト以下であった。以上から福島県民の平成二十三年の年間外部被曝線量は、十ミリシーベルト以下、多くは五ミリシーベルト以下と推定する。
科学的評価は、子どもから成人まで、個人線量計の装着でわかること。ただし、政府災害対策本部は、線量の比較的高かった初期の三~五月にそれをしなかった。とんでもない杜撰さである。当時、飯舘村など屋内退避勧告をしていたにも関わらずである。
以上の個人線量計による実測値から、私は福島県民の多くは平成二十三年の外部被曝が数ミリシーベルトと暫定評価している。
内部被曝については、筆者は、放射性ヨウ素による甲状腺線量と体内セシウムによる線量を現地で検査している。これまでに百人以上の希望者について、二本松、福島、南相馬、いわき市、郡山で検査した。検査した六十八人の県民の甲状腺線量は八ミリシーベルト未満。八月までの乳児、幼児を含む五十二人の県民のセシウム検査では、ほとんどの内部被曝が〇・一ミリシーベルト未満である。特に子どもたちのセシウム内曝は今のところ全員が〇・一ミリシーベルト以下である。この内曝その場評価方法は、筆者は旧ソ連の被災地でのロシア科学者との共同調査などを通して独自に開発したものである。
小さな子どもたちは大人に比べて放射線影響が三倍くらい大きいので、注意が必要である。これまでの調査結果は、飯館村などで大人の外曝が仮に三ミリシーベルトとしても、三倍で子どもは九ミリシーベルト相当となる。これなら安全範囲と言える。実際には、個人線量計を政府が装着させていないので、本当の値は分からないのだが。
日本の放射線防護の科学力では、外曝と内曝のどちらも、正確に評価できるのだが、菅政権はその科学力を活用しなかった。これが一番の問題である。そのため、非専門家たちの想像力で怪しい過大な線量値が多数の県民と国民を不安に陥れてしまったと、筆者は見ている。
今後、筆者が実施している福島県民に対する科学的な放射線衛生調査を、国の責任で希望者に対して行うべきである。間違っても、県民をモルモット扱いしてはならない。低線量を、それぞれの県民が知ることにより安心することが目的である。また、特に二十~三十kmの農業や酪農を復興させるための科学プロジェクトを早急に立ち上げ、住民の個人線量が年間一ミリシーベルト以下になり、作物のセシウムが基準値以下となるように、表土の除染を国の責任でする。さもなければ、福島の農業は崩壊する。これが、七月二十七日都内での福島支援のシンポジウムでの筆者の基調科学講演での提言である※10。直後に、総理官邸へ意見として送信した。野田佳彦新総理には、福島復興に強い姿勢を期待したい。
二十km圏内に、表土除染センターを複数建設し、住民らに働いてもらう。その事業の結果、農業・酪農が再建することになる。そのためには、一兆円、二兆円かかっても良し。世界に日本の科学力と強い意思を示そうではないか。
福島は広島にもチェルノブイリにもならなかった事実を、復興という形で世界に発信するのだ。これが、戦後日本の歪んだ姿勢を改めることになる。
(初出:2012年10月1日 アパグループ第4回「真の近現代史観」懸賞論文受賞者発表 掲載)