福島の核事象では、広範囲に顕著な量の放射性物質が飛散したが、原子力施設職員たちに急性死亡は一人もいないばかりか、直後から5月の時点までに急性放射線障害すら一人もいない低線量事象である。もちろん、福島県民にも急性放射線障害はない。これは水素爆発はあったものの、圧力容器および格納容器は閉じ込め機能をかなり保持していた証拠でもある。
日本社会が科学情報で混乱するなか、世界の核被災地を調査してきた放射線防護学の専門家である高田純が、同一手法で、震災一月以内に、福島の20キロメートル圏内を含む東日本の放射線衛生を調査した。特に、10年前に開発した甲状腺線量計測法を初めて適用することと、震災3ヶ月前に入手していた米国製の核兵器テロ対策用の携帯ガンマ線スペクトロメータの活用が、今回の現地でのその場放射線衛生調査の特徴であった。
福島県民の線量調査結果は、チェルノブイリ事故に比べて、圧倒的に低線量で、健康被害は生じないとの結論であった。