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管理者です。
本投稿は、たかだ氏の〔科学技術立国再生に黄色信号点滅~〕に対する枝スレッドとして提案されましたが、議論発散を避けるため、新たな親スレッドとします。
ご理解のうえ、活発な議論お願いします。
--------オリジナルここから---------------
真摯な回答をいただき、感謝します。こちらから、発言の方向として、お願いがあります。この技術開発の部外者である、わたしたち国民を対象とした、発言をお願いしたいのです。少なくとも、この科学技術立国再生のツリーのなかでは。勝手かもしれませんが、宜しくお願いいたします。
原子力分野のみなさんから、「もんじゅ」の開発を否定する発言はありませんでした。ただし、私を除くと、当事者であるサイクル機構の技術者のひとりだけが、技術開発の積極的な発言をされたと、感じました。私からすれば、原子力学会のみなさん全員が当事者だと思っています。それなのに、静かすぎやしませんか?一方、反原子力の人たちは、「もんじゅを廃炉に」と大合唱しています。
社会では、声の大きい者が勝つこともあります。世論が形成されることがあるからです。ハードルはあっても、技術は必ず成功するとの信念がありますが、私が「もんじゅ」を信じた大きな訳が、あります。大変人間的な理由です。私の所属する放射線影響学会で、「核燃料サイクルと公衆の放射線防護」というワークショップを開催しました。私は、そのオーガナイザーのひとりです。「核燃料サイクル」の安全な開発を求める意味もあっての企画でした。2年ほど前、「もんじゅ」はナトリウム漏れの後で、難しい状況にはあったかと思います。 講演では、サイクル機構の技術者が、改造の技術的内容を説明しました。「安全の本音」を知りたくて、帰りの電車のなかで、それとなく「もんじゅ」開発の自信を尋ねました。すると、きっぱりと、「できます」と言い切ったのです。フランスやロシアの開発事例からではなく、日本の現場技術者のこうした一言が、私の心に響きました。
高裁で負けたのだから、戦術として「裁判論」を検討するのは、当然でしょう。また改革のための組織論を検討するのも必要でしょう。しかし、原子力学会のこの場では、先ずは技術者にもっと「もんじゅ」の改造計画も含め、「安全論」を強く示していただきたい。「技術で答える」と言った人がいました。良い発言です。ただし、後でではなく、直ぐに、どんどん発言ください。わたしたち国民がわかるように。
当事者から発言がないぞ、と高田先生に言われて筆をとったサイクル機構職員です。私は、少し前まで「もんじゅ」の仕事をしてきたものです。分かりやすい安全論がいかに難しいかも実感してきました。
例えば、「車は安全だと思いますか?」と質問されれば、かなりの人が「危険だと思う」と答えるのではないでしょうか。また、そうだからと言って車の利用を止めるわけでないのも事実であります。いずれにしろ、車のように比較的分かりやすいリスクや便益性をもっていても、安全か否かの回答が分かれるのが現実ではないでしょうか。
訴訟では、耐震性、ナトリウム漏えい事故、蒸気発生器伝熱管破損事故、仮想的炉心崩壊事故が議論されてきました。 そして、不思議なことに、これらの論点は第1審と全く同じであったのに、判決が180度違ってしまいました。(因みに、第1審の論点は、「サイクル機構ホームページ・原子力の広場・Q&A・もんじゅ判決関連」にまとまっています。)
では何故そうなったのか? いろいろな見方があるのでしょうが、以下のたとえ話に似ているような気がします。
「ジェット機は安全に作られている。エンジンが1つまたは2つ止まっても操縦性が失われるわけではなく、確実に着陸できる。」と説明したとします。「では、エンジンがさらに1つ、2つ壊れたらどうなりますか?」と聞く人がいれば、ある時点で「墜落します」ということになるわけですが、結局、どこまでミスや故障を想定するか、という問題です。そして、第1審の裁判官は、「もんじゅ」の事故想定はこれまでの規制の範囲内であるから安全と判断し、今回の裁判官はさらに想定を拡大すべきと考え、「安全ではない」と判断した。
さて、今回の裁判がこのような問題だとすると、どこで線引きするのが妥当かということになり、果たして分かりやすく説明できるのだろうか、と考えてしまいます。
原子力界においても、「どれだけ安全ならば、安全と言えるか?」という議論がこれまで繰り返されてきました。私自身は、その一つの回答が確率論的安全(リスク)評価だと考えています。そして、「もんじゅ」に関するその評価結果によれば、リスクは国内の軽水炉と同様に極めて低いレベル(炉心損傷確率が10のマイナス6乗以下)であるとの答えになっており、この観点から私は「もんじゅ」が安全であると確信しています。
thinkです
> 原子力界においても、「どれだけ安全ならば、安全と言え
> るか?」という議論がこれまで繰り返されてきました。私自
> 身は、その一つの回答が確率論的安全(リスク)評価だと考
> えています。そして、「もんじゅ」に関するその評価結果に
> よれば、リスクは国内の軽水炉と同様に極めて低いレベル
> (炉心損傷確率が10のマイナス6乗以下)であるとの答え
> になっており、この観点から私は「もんじゅ」が安全である
> と確信しています。
当方は色んな立場(開発の当事者であったり、管理する立場にあったり、広報に近い立場でもあったり・・・コウモリみたい人生です)に居たこともあり、【安全の線引き】に係るhiroさんの悩は十分とはいわないまでも理解しているつもりです。が、一方でリスクや確率という言葉、あるいは数字が出てきた時点で、既に話が世間一般の理解し得る領域ではなくなると思いますし、また、認知あっての理解であって、その認知が無い状態で【安全の線引き】が理解できるネタを出しても暖簾に腕押し状態です。
例えば、よく自動車や飛行機の事故確率と比較し、こんなに確率が低いのだと説明しますが、それは確率の概念が念頭になければ、単に「100万年に1回なら、明日でも今でも起こり得るでしょ!現に、過去10年に何回も事故が起こってるんだから、10^-6なんて眉唾なんじゃない?」となり、話は一向にかみ合いません。
じゃあ、「どうすんの?」となりますが、残念ながら抜本的な解は、今のところ見つかりません。ヒントといえばヒントかもしれませんが、以前Yahooの掲示板で何名かの反対派の方と議論しましたが、こちらが真摯な態度で丁寧に説明し、相手を理解しようとする態度を示せば、こちらの説明を理解する努力を示してくれる方もいらっしゃいました。もちろん、全然人の話を聞かず、教条的に攻撃してくる2チャンネル君も居ましたが・・・まあ、結局、そうやってコツコツとやって相互を認知したうえで、はじめて確率論などの工学の話になるしかないのかなあと思います。
とはいえ、エネルギー会の某氏の様に、言い訳としか捉えられない様な発言が公開される始末では・・・
高速増殖炉の原型炉である「もんじゅ」の前には、その実験炉「常陽」がありますね。サイクル機構・大洗工学センター所長によれば、運転開始以来20年間、炉心に関わる重大な故障・事故はなかったといいます。この「常陽」は「もんじゅ」と同じく、1次・2次とも冷却はナトリウムです。ナトリウムを使用するから、危険だとはいうことにはなりませんね。この安全運転の実績を、まず、サイクル機構・「常陽」担当の方に説明いただきたいです。
「もんじゅ」では2次系ナトリウム冷却材に蒸気発生器(水)が接続されています。ここが「常陽」との構造的な違いだと理解してよいでしょうか?「もんじゅ」のナトリウム漏れの原因は、温度計の構造の不適合であって、この蒸気発生器には無関係なのでしょうか?「もんじゅ」担当の方に説明いただきたいです。
thinkです。
常陽、もんじゅの方がお話される前に、とりあえず公開HPをご紹介しておきます。
サイクル機構:http://www.jnc.go.jp/
サイクル機構大洗:http://www.jnc.go.jp/zooarai/
常陽:http://www.jnc.go.jp/zooarai/joyo/
もんじゅ:http://www.jnc.go.jp/zmonju/mj_home.html
両炉とも設置変更許可申請書がWeb上で閲覧できるというのは非常に有難いことです。
JNCのある方の発言: 「”公正で独立した”裁判所が両方の言い分を聞き下した判断であろう、もんじゅは本当は危険なのでは?と感じている市民の方々がおられることです。本当に残念だと思っています。」
これに対する、私の返答: 国民の多くが、そう感じていると、私も思います。科学的・技術的事実ではなく、そうした印象を持っているのではないでしょうか。それは、原子力業界全体が科学的・技術的事実を、国民に対して、理解のできるような説明を怠ってきたからではないのでしょうか。JNCは、国民の理解を得るために、今までとは違った取り組みをすべきです。今までの取り組みが、間違っているのではなく、それが不十分だったと思います。
国民は、常陽での成果を知りません。それは、JNCが知らせる努力を、怠っていたからではないでしょうか。 言いすぎかもしれませんが、結果的にはそうです。JNCの「もんじゅ訴訟対策本部」はこうした「説明責任」の意味を理解して、プラスアルファの取り組みをすべきです。
今回の私からの公開質問にさえ、まだ回答できていない事態を、JNC理事長および原子力業界の責任ある方々はどう思っているのでしょうか? 早急の回答を待っています。
原子力業界のみなさんに代わって、私の方から、「核」に関して、日本国民の多くに知ってほしい情報を発信します。岩波書店月刊誌「科学」3月号からの連載「核科学の光と影」です。
今回は、その多くのページを割いて「影」の部分に光を当てます。これまで弊害となってきた「原子力の安全神話」を越えて、核技術の開発利用を正常化したく、執筆しています。学会および業界のみなさんにとっても、新鮮かつ刺激的な内容になるはずです。 第一回目は、今週発行されます。尚予告は、私のホームページに掲載しています、ご覧ください。
> JNCのある方の発言:
> 「”公正で独立した”裁判所が両方の言い分を聞き下した判断
であろう、もんじゅは本当は危険なのでは?と感じている市民の方々が
おられることです。本当に残念だと思っています。」
この方の発言の残念とは、
・裁判所の判決が残念
・もんじゅを本当に危険と思っている人がいることが残念
・このような事態となった、これまでのJNCの対応が残念
とか、あると思います。この方の発言が三番目以外でしたら、それだけで高田先生が求めているものと違ってしまうと思います。
「残念」が非常に気にかかります。
> 高速増殖炉の原型炉である「もんじゅ」の前には、その実験炉「常陽」がありますね。サイクル機構・大洗工学センター所長によれば、運転開始以来20年間、炉心に関わる重大な故障・事故はなかったといいます。この「常陽」は「もんじゅ」と同じく、1次・2次とも冷却はナトリウムです。ナトリウムを使用するから、危険だとはいうことにはなりませんね。この安全運転の実績を、まず、サイクル機構・「常陽」担当の方に説明いただきたいです。
> 「もんじゅ」では2次系ナトリウム冷却材に蒸気発生器(水)が接続されています。ここが「常陽」との構造的な違いだと理解してよいでしょうか?「もんじゅ」のナトリウム漏れの原因は、温度計の構造の不適合であって、この蒸気発生器には無関係なのでしょうか?「もんじゅ」担当の方に説明いただきたいです。
もんじゅの技術者から回答いたします。技術課の弟子丸と申します。回答が遅れて申し訳ありません。「もんじゅ」では、原子炉の熱は1次冷却系から中間熱交換器を経て2次冷却系に伝えられ、蒸気発生器(蒸発器と過熱器から構成)で水を蒸気にかえ、その蒸気で発電するしくみになっています。2次冷却系に蒸気発生器があり、その蒸気で発電するのが「常陽」と大きく異なるところです。「常陽」では、高速増殖炉の燃料や炉心、ナトリウム冷却系についての技術の実証を行ったのに対して、高速増殖炉の発電プラントとしての技術の実証を行うために建設されたのが「もんじゅ」です。なお、ナトリウム加熱の蒸気発生器については、やはり大洗工学センタに「もんじゅ」用の蒸気発生器の1/5の試験機をつくり、性能、耐久試験をおこなっています。
平成7年12月に発生しました2次系ナトリウム漏えい事故は、2次冷却系の中間熱交換器出口配管についています温度計のさや管が破損して、ナトリウムが漏れたもので、蒸気発生器とはまったく関係はありません。
温度計のさや管がなぜ破損したかというと、ナトリウムの流れにより、さや管の下流側に渦が発生するのですが、その渦の発生の周期と温度計のさや管の固有振動数がたまたま一致して共振(1秒間に260回程度)し、さや管のくびれ部分に高サイクル疲労で亀裂が入ったためです。このような渦による振動については、もっと流れのはやい状態で発生するカルマン渦による振動は古くから知られていたのですが、もんじゅの2次系の温度計の破損原因となった渦は、70年代に英国の北海油田でプラットホームの巨大な足が海の流れで折れたことが発端で発見された比較的最近の知見で、温度計の設計当時(84年から89年頃)はあまり認識されていなかったものです。その後91年の米国機械学会のボイラ・圧力容器規格の流力振動に対する設計指針(設計手引き)には、今回の破損原因となった渦についても考慮すべきことが記載されています。(詳細については、学会誌Vol.39(1997)No.9「もんじゅナトリウム漏えい事故に関する技術的報告」をご参照下さい。)
弟子丸さんから、待ちわびた回答をようやくいただきました。とにかく、ありがとうございます。
「平成7年12月に発生しました2次系ナトリウム漏えい事故は、2次冷却系の中間熱交換器出口配管についています温度計のさや管が破損して、ナトリウムが漏れたもので、蒸気発生器とはまったく関係はありません。」
蒸気発生器とは全く関係がないとの回答は、もんじゅの技術としては安心材料だと思います。
ここで、関連質問・コメントがあります。「2次系ナトリウム漏えい事故」と言いましたが、これは本当に事故だったのですか?社会的インパクトは確かに大でしたが、原子力発電所の事象の国際尺度(INES)からは、レベル1との評価でした。すなわち、事故ではなくて、異常事象と評価されています。あえて、事故と言うのは、弟子丸さんの認識不足ではないのですか?ここは、平易な言葉を使っての説明をお願いしますが、技術的に誤った説明はしないようにしていただきたいと思います。昨年、「もんじゅ」を見学した際にも、案内嬢は、「事故」と言ってましたが、サイクル機構の公式な見解のように受け取られます。この件、はっきりさせてください。私は、この場合「事故」との表現は不適切だと思います。
> ここで、関連質問・コメントがあります。「2次系ナトリウム漏えい事故」と言いましたが、これは本当に事故だったのですか?社会的インパクトは確かに大でしたが、原子力発電所の事象の国際尺度(
> INES)からは、レベル1との評価でした。すなわち、事故ではなくて、異常事象と評価されています。あえて、事故と言うのは、弟子丸さんの認識不足ではないのですか?ここは、平易な言葉を使っての説明をお願いしますが、技術的に誤った説明はしないようにしていただきたいと思います。昨年、「もんじゅ」を見学した際にも、案内嬢は、「事故」と言ってましたが、サイクル機構の公式な見解のように受け取られます。この件、はっきりさせてください。私は、この場合「事故」との表現は不適切だと思います。
世界中で発生する原子力発電所における故障や卜ラブル事故などを同一の尺度で見るため、国際原子力機関と経済協力開発機構・原子力機関の協力で策定されたのが、原子力事象評価尺度(INES)です。日本でも1992年8月から経済産業省が日本独自のものに替えて採用し、文部科学省もこれを採用しています。この評価尺度では、まったく重要でないレベル0の事象から、レベル1~3の異常な事象、レベル4~6の事故および健康や環境に対して広範な影響をもつレベル7の事故までの8段階に分類しています。ご指摘の通り、もんじゅでの2次系温度計からのナトリウム漏えいは、レベル1で「異常な事象」に分類されますし、放射性物質の漏えいなど外部への影響がある「事故」ではなかったことはその通りです。レベル1であることはサイクル機構のポケットブックにも記載していますし、また、色々なところで、原子炉の安全性に直接係わるものではなかったことも説明しています。一方、「事故」と「事象」という区別は一般の方には馴染みがなく、当初は「事象」という言葉も使用しましたが、かえって、起きたことを小さく見せようとしているのではとのご批判を頂いたことも事実です。このため、「この事故」とか、「ナトリウム漏えい事故」という表現にしてきています。この結果として、ナトリウム漏えいは大きな事故だと取られているとのご指摘であろうと思います。そう思うこともありますが、発生したことの内容や同じことを繰り返さないように対策をしている(流れによる振動で他の機器が破損しないことを確認したり、2次系の温度計を改良したりする、ナトリウムが漏れた場合の影響をできるだけ小さくするよう設備改造する)ことを説明し、伝えることが、重要であろうと考えています
弟子丸さん、早速の回答ありがとうございます。「事故や故障」の件は、別途のテーマとして、本論を進めたく思います。
「この蒸気発生器の運転試験の実績から、今回の判決であった1本の伝熱管の破損が、ナトリウムと水蒸気との反応により、広範囲の伝熱管が次々と壊れる・連鎖反応的破壊(高温ラプチャ型の破損)の発生につぃての技術的見解をお聞かせいただけますか?(サイ太さん)」
大事なことは、その発生確率が低いことを証明するだけでなく1本の破壊時の防護策だと思います。その辺は、どうでしょうか?もんじゅの蒸気発生器の構造や防護システムから説明ください。(弟子丸さん)
> 大事なことは、その発生確率が低いことを証明するだけでなく1本の破壊時の防護策だと思います。その辺は、どうでしょうか?もんじゅの蒸気発生器の構造や防護システムから説明ください。(弟子丸さん)
まず、もんじゅの蒸気発生器の構造ですが、蒸気発生器は、水(約240度)から蒸気(約370度)を作る蒸発器と、その蒸気をさらに熱し、タービンを回すのに適した空気のようにカラカラな気体になった蒸気(約490度)を供給する過熱器からなっています。蒸発器はナトリウムと水のどちらにも強い材料で製造しなければなりません。そこでクロムとモリブデンなどを少量混ぜた合金鋼を使用しています。過熱器では、ナトリウムや水蒸気に強いばかりでなく高温にも強いステンレス鋼を使用しています。また構造的にも特別な工夫がされています。蒸気発生器では外径3.2cmほどの伝熱管の中に水や蒸気を通して、その外側から流れるナトリウムからの熱を伝えています。高温で使われているため、その温度変化に対して蒸気発生器胴部と伝熱管が別々に伸縮するので、熱膨張差を吸収する必要があります。「もんじゅ」では、伝熱管をぐるぐると螺旋状に巻いた構造にして、熱による伸縮の違いを螺旋の曲がりで受け止める設計にしています。これは、サイクル機構の大洗工学センターの実規模試験でたいへん優れた性能を持つことが示されていることは、サイ太さんが述べている通りです。
もんじゅ」では、伝熱管をぐるぐると螺旋状に巻いた構造にして、熱による伸縮の違いを螺旋の曲がりで受け止める設計にしています。これは、サイクル機構の大洗工学センターの実規模試験でたいへん優れた性能を持つことが示されていることは、サイ太さんが述べている通りです。
その構造の試験で良好であることを確認したとのこと。技術開発として妥当な手順ですね。
> 大事なことは、その発生確率が低いことを証明するだけでなく1本の破壊時の防護策だと思います。その辺は、どうでしょうか?もんじゅの蒸気発生器の構造や防護システムから説明ください。(弟子丸さん)
次に伝熱管が破損したときの防護システムです。蒸気発生器の材料や構造には万全を期していますし、製造にあたっては、素材購入時、溶接時、組立の各段階で傷や内部の欠陥がないか検査し、伝熱管がこわれないようにしています。それでも万一の伝熱管からの水漏れ(管の内圧が約140気圧程度と高いため、伝熱管が破損すると水が伝熱管からナトリウム中へ出てきます)が発生した場合を想定して、「もんじゅ」では水漏れの検出と処置についての対応をしています。
まず漏れの検出については、水がナトリウム中に入ると化学反応により水素が発生することから、ナトリウム中やナトリウムの液面上を覆っているアルゴンガス中の水素の存在を常に調べることによって破損を早期に検出します。そして水素が検出されると、運転員の判断で(また水素濃度の上昇率が高い場合には自動で)水漏えいが起きたことを示す信号を発します。また万一大量の水漏れが起き、大量の水素ガスが発生した場合には、蒸気発生器の圧力が上昇します。圧力計の値が決められた値に達しても、自動で水漏えいが起きたことを示す信号が出ます。その信号がでると、原子炉の停止及び冷却,蒸気発生器の隔離,蒸気発生器内の水・蒸気の排出等が自動的に行われ,プラントは安全に停止します。また、蒸気発生器に設けられた圧力開放板と呼ばれる薄い金属の板が圧力で破れ、水素を放出し、圧力が低くなるようにしています。このときに化学反応で発生した水酸化ナトリウムなどの化合物も放出されますが、それらはナトリウム・水反応収納設備と呼ばれる窒素を満たした設備に導かれ、水素だけ分離され、大気中に放出し、燃焼させます。
これらの機能についてもサイクル機構の大洗工学センターで多くの実験が繰り返され、その効果を確認してきています。
水漏れに関しては、水素発生時の量の大小で、2通りの対策がある。大量水素発生時には、原子炉の自動停止をはじめ、安全にプラントが停止するシステムであることのこと。 しかも、水素のガス抜きも自動化されている。しかも、発生が予想される水酸化ナトリウムの処置もある。これらの効果は、実験で確認済み。安心ですね。
> 「この蒸気発生器の運転試験の実績から、今回の判決であった1本の伝熱管の破損が、ナトリウムと水蒸気との反応により、広範囲の伝熱管が次々と壊れる・連鎖反応的破壊(高温ラプチャ型の破損)の発生につぃての技術的見解をお聞かせいただけますか?(サイ太さん) 」
蒸気発生器の安全性に関する話題なので、安全審査当時に担当者であった私から回答させて頂きます。
「もんじゅ」の安全審査を受ける前、1975年頃、高速増殖炉の開発において約10年以上も日本に先行していた英国や米国等では、蒸気発生器のトラブルを少なからず経験していましたので、プラントの稼働率向上を目指すには、蒸気発生器は高速増殖炉の重要機器であると位置付けられ、ナトリウムと水の反応が大きな技術的課題であると認識されていました。その結果、欧米の経験を踏まえて「50MW蒸気発生器試験施設」という試験装置を作り、製作性・運転性・耐久性等の試験を行うとともに、「蒸気発生器安全性総合試験装置(通称SWAT‐3)」も用いて、蒸気発生器の事故状況の把握や安全装置の性能を確認する試験が繰り返されました。
欧米の経験では、蒸気発生器のトラブルの最大の要因は伝熱管の溶接部・支持構造部や水の管理方法でした。これらの問題点を改良した50MW蒸気発生器は、トラブルのない良好な成績でした。したがって、この運転試験の実績は、製作や管理上の改善の妥当性や伝熱管の破損確率が低いことを実証したことになります。
一方、蒸気発生器安全性総合試験装置(SWAT‐3)においては、1本の伝熱管の破損がその周囲の伝熱管に伝播する現象について試験研究を行いました。実を言うと、私は、このSWAT‐3の担当でした。大洗工学センターには、このほか、SWAT‐1やSWAT‐2という小型の試験装置もあり、基礎的な試験を100回以上繰り返していました。(註:SWATとはSodium Water Reaction Testの略)
破損の伝播機構として、当時3つを想定していました。①蒸気とナトリウムとの反応で引き起こされる激しい腐食による減肉現象(ウェステージ型破損)、②反応による高温とそれに伴う伝熱管材料の強度低下による破裂現象(高温ラプチャ型破損)、③大規模な反応で発生する衝撃圧による破損、です。
①の現象は、主に小規模な蒸気の漏れ(10g/sec以下)により発生するもので、破損の伝播速度が予測できるような実験式を確立しました。②と③については、比較的大規模な場合に想定されますが、この現象を解明するため伝熱管などは実機と同じ物を用いて実験しました。伝熱管1本が完全に破断すると10kg/sec程度の水がナトリウム中に漏えいしますが、これも模擬した実験でした。その結果、安全審査までに実施したすべての実験では、高温ラプチャや衝撃圧力による破損は生じないというものでした。
安全審査中および安全審査後も、さらに確証するため、またより詳細なデータを取得して汎用性をもった解析ができるように、実験が繰り返されました。その過程で、ちょうど2kg/sec程度の中規模の水漏えいが高温ラプチャ型破損にとって厳しいことが分かり(Run16)、さらに、伝熱管内の蒸気の流れによる冷却効果を模擬した精度の高い実験(Run17、19)により、高温ラプチャは「もんじゅ」の条件では発生しないことを確認しました。
現時点では、高温状態での材料データやナトリウムと水の反応による加熱状態における熱伝達率などから、伝熱管の破損を計算で評価できるまでになっており、その評価結果でも、「もんじゅ」の条件では高温ラプチャは発生しないという結果になっています。
但し、①のメカニズムで最大2本まで破損が拡大する可能性があるとの結果でしたので、余裕をもたせて、4本の伝熱管の完全破断が生じても蒸気発生器は大丈夫のような設計となっています。
以下、蛇足です。ナトリウムはとても怖い危険なものとの印象をお持ちの方も多いと思いますが、実は少し違います。消防法で危険物第3類に分類されるもので、石油類が第4類ですので、それと同じような危険度と考えて戴いたほうが正確ではないかと思います。また、ナトリウム中の酸素濃度を制御すると、材料に腐食を生じさせないという利点もあり、水管理よりも管理がやさしい気がします。
> 欧米の経験では、蒸気発生器のトラブルの最大の要因は伝熱管の溶接部・支持構造部や水の管理方法でした。これらの問題点を改良した50MW蒸気発生器は、トラブルのない良好な成績でした。したがって、この運転試験の実績は、製作や管理上の改善の妥当性や伝熱管の破損確率が低いことを実証したことになります。
なるほど、日本は、先行技術を改良すること得意ですからね。
> ①の現象は、主に小規模な蒸気の漏れ(10g/sec以下)により発生するもので、破損の伝播速度が予測できるような実験式を確立しました。②と③については、比較的大規模な場合に想定されますが、この現象を解明するため伝熱管などは実機と同じ物を用いて実験しました。伝熱管1本が完全に破断すると10kg/sec程度の水がナトリウム中に漏えいしますが、これも模擬した実験でした。その結果、安全審査までに実施したすべての実験では、高温ラプチャや衝撃圧力による破損は生じないというものでした。
詳しい説明ありがとうございます。蒸気発生器安全性総合試験装置を用いて、破損試験がしっかりと実施されたことが分かりました。もんじゅ判決で争点となった「高温ラプチャ型破損」についても、実機と同じ物を用いて実験したのですね。 1本が完全に破断した場合には、連鎖反応的な周囲の破壊は発生しないと理解してよろしいのですか? ちょっと、意外でした。
> 安全審査中および安全審査後も、さらに確証するため、またより詳細なデータを取得して汎用性をもった解析ができるように、実験が繰り返されました。その過程で、ちょうど2kg/sec程度の中規模の水漏えいが高温ラプチャ型破損にとって厳しいことが分かり(Run16)、さらに、伝熱管内の蒸気の流れによる冷却効果を模擬した精度の高い実験(Run17、19)により、高温ラプチャは「もんじゅ」の条件では発生しないことを確認しました。
> 現時点では、高温状態での材料データやナトリウムと水の反応による加熱状態における熱伝達率などから、伝熱管の破損を計算で評価できるまでになっており、その評価結果でも、「もんじゅ」の条件では高温ラプチャは発生しないという結果になっています。
> 但し、①のメカニズムで最大2本まで破損が拡大する可能性があるとの結果でしたので、余裕をもたせて、4本の伝熱管の完全破断が生じても蒸気発生器は大丈夫のような設計となっています。
ただし、2kg/sec程度の中規模の水漏では、高温ラプチャ型破損が発生するかもしれない。ただし、もんじゅの構造では、それが発生しないと推定している。大事なことは、その推定ではなく、万一そうした事態が発生した際の安全性です。それについては、「4本の伝熱管の完全破断が生じても蒸気発生器は大丈夫のような設計となっています」とは、すごい装置だなと思いました。
仮想のことですが、5本以上が完全破断し、蒸気発生器が破損したら、どうなるのでしょうか?その場合の原子炉の安全性について、お答えください。(明日、こちらの研究所で、大事なシンポジウムがあります。Hiroさんが、お答えになっても、こちらの返事は、土曜日以後になります。ご了解ください。)
> 以下、蛇足です。ナトリウムはとても怖い危険なものとの印象をお持ちの方も多いと思いますが、実は少し違います。消防法で危険物第3類に分類されるもので、石油類が第4類ですので、それと同じような危険度と考えて戴いたほうが正確ではないかと思います。また、ナトリウム中の酸素濃度を制御すると、材料に腐食を生じさせないという利点もあり、水管理よりも管理がやさしい気がします。
なるほど。水素は危険物だったかと思いますが。今、水素を利用した燃料電池が開発されています。将来水素ステーションなどが、街中に数多く建造されたら、これについての安全管理は、ナトリウム以上でしょうね。
> 仮想のことですが、5本以上が完全破断し、蒸気発生器が破損したら、どうなるのでしょうか?その場合の原子炉の安全性について、お答えください。(明日、こちらの研究所で、大事なシンポジウムがあります。Hiroさんが、お答えになっても、こちらの返事は、土曜日以後になります。ご了解ください。)
5本以上の破損については、安全審査の対象外ですので、概略の評価結果となります。まず、工学的手法には安全係数のような余裕が組み込まれていますから、4本の完全破断が設計の基準だからといって、それを越えたらすぐに蒸気発生器が壊れるわけではありません。設計基準の数倍の伝熱管の完全破断でも蒸気発生器は大丈夫です。
そして、さらに多くの伝熱管の破断を仮想すれば、圧力に対して一番弱い部分が変形して破損することになります。例えば、配管の破損が考えられますが、そこからナトリウムが漏れ、その結果として、大規模なナトリウム漏えい事故に発展します。しかし、この場合はすでに弟子丸さんの説明(No. 491)にあった対策が働きますから原子炉への影響は考えられません。
「もんじゅ」の場合には、蒸気発生器と原子炉との間に中間熱交換器が設置されています。このため、ナトリウムと水との反応による圧力や水素ガスは、蒸気発生器から原子炉に直接伝わらない仕組みになっているのです。したがって、原子炉の安全性にとって、その中間熱交換器が壊れることはないのか、が重要となります。仮想的な設計基準の数倍の事故の場合でも、中間熱交換器は比較的頑丈に作られていますので、むしろ他の部分が壊れると予想しています。
「この常陽ともんじゅの二つの事例から、適切な温度計の構造を造れば、この温度計破壊のトラブルは、回避できるという結論ですね。ありがとうございました。この失敗を次の成功に結びつければ、良いわけです。技術開発としては、ごく普通のことです。」
そこで、もんじゅでは、次の改良型では、どのような構造で、そうした破壊を防止するのですか?その自信の程は?
> そこで、もんじゅでは、次の改良型では、どのような構造で、そうした破壊を防止するのですか?その自信の程は?
もんじゅの2次系温度計がこわれた原因は、サイ太さんも言っているように、鞘管が細く長くなっていて、細い部分と太い部分の境界を鋭い角にしてあったためです。このため、改良型では鞘管の長さを短くして、剛性(しなり難く、がっちりしていること)を増すようにします。また、細い部分からだんだん太くなるような形状にして、細い部分と太い部分の境界が鋭い角にならないようにします。勿論、温度計で正確な温度をすばやく測るという当初の目的は変わりませんので、どのくらいの長さが配管内に突き出ていれば、正確に温度が測れるか、解析して必要かつ十分な長さにしています。設計にあたっては、ナトリウムの使用条件下での圧力や流動に対して健全であることは勿論、2次系温度計の破損原因となった渦による共振も起きないことを新たに機械学会で策定された基準をもとに確認しています。加えて、試作品をつくり、運転状態のナトリウムと同じ性質(粘性や密度)の水を使った水流実験で振動が起きないことを確認しました。このように、十分頑丈な温度計としています。その他設計にあたっては、色々な検討や工夫もしています。興味がおありでしたら、詳細については、サイクル機構技報第17号「高速増殖原型炉「もんじゅ」の改良型温度計の設計」を参照下さい。サイクル機構ホームページの「研究成果・公開資料」の「研究成果」の欄にアクセスすれば入手可能です。(http://www.jnc.go.jp/siryou/gihou/main.html)
詳細については、サイクル機構技報第17号「高速増殖原型炉「もんじゅ」の改良型温度計の設計」を参照下さい。
拝見しました。問題解決型の仕事は、日本技術の得意とするところ。まず、間違いないと思います。
次に、それでも、万一、そうした箇所から、ナトリウムが配管から漏れたら、どうなるのでしょうか? 今後の、それを対策した装置改造も含めて、説明ください。
> 次に、それでも、万一、そうした箇所から、ナトリウムが配管から漏れたら、どうなるのでしょうか? 今後の、それを対策した装置改造も含めて、説明ください。
ナトリウムが漏れないように細心の注意を払っていますが、ナトリウムが漏れた時のために、ナトリウムが入っている容器や配管には、ナトリウムの漏れを見つけだす検出器が多数つけられており、わずかな漏れもいち早く見つけることができるようにしています。また、建物等を作っているコンクリートの中には水分が少し含まれています。漏れたナトリウムとコンクリートが触れないように、コンクリートの表面には鉄板が張られています。
ナトリウム中に放射性物質がある1次系と呼ばれる原子炉を直接冷却している系統の配管・ポンプなどが置かれている部屋は、ナトリウムとは反応しない窒素ガスを満たしています。そのため、万が一ナトリウムが配管から漏れた時でも、空気とは反応せず燃えることはありません。
一方、2次系の機器や配管を納めている部屋は、空気ですので、万が一ナトリウムが漏れた場合は燃えることがあります。このため、ナトリウムが漏れた場合には、原子炉を止めて、ナトリウムを抜き取ることで、漏れを止めるようにしています。また、2次系の部屋の床には傾きをつけた鉄板(床ライナといいます)が敷いてあります。漏れたナトリウムの量が多い場合には、床ライナにそって流れ、一番低い所に設置した垂直の配管を通して一番下の部屋に収納されます。この部屋には半密閉の蓋(燃焼抑制板といいます)がありますので、その下に入ったナトリウムは、窒息消火され、燃焼は少量で収まります。
次に2次系ナトリウム漏えい事故の反省や知見を受けた設備の改善についてですが、原因究明の過程で床ライナが漏れたナトリウムの影響で腐食する可能性のあることが分かりました。機器への影響をできるだけ抑えるためにも、漏れを見つたら、今より早くナトリウムの漏れを止め、ナトリウムの燃焼を抑えるような設備改造を行います。具体的には次のようなことです。
ナトリウムが空気中に漏れた場合は、空気と反応して、ナトリウムの化合物が白煙のように発生しますが、火災検知器の一種の煙感知器で容易に見つけられます。今あるナトリウムの検知器に加えて、煙感知器や熱感知器を増設し、その増設する検知器の信号で、部屋の換気を止める(空気の供給を絶つ)ことで、ナトリウムの燃焼を抑えるようにします。また、空気雰囲気の各部屋に監視カメラを設置し、中央制御室で他のナトリウム漏れを見つける検出器の信号と一緒にその映像も見られるようにし、運転員がナトリウム漏れの時にすばやく対応できるようにします。
ナトリウムの漏れが確認できたら、まず原子炉を手動で止めます(漏れが多い場合には自動的に止まります)が、それに引き続きすぐに漏れているループ(もんじゅには1次系、2次系が3ループづつあります)のナトリムを抜き取ることで漏れを止めます。このナトリウムを抜き取るための設備を改造(抜き取り配管の太さを太くし、弁を増やします)し、抜き取り時間を短縮します。現在2次系のひとつのループのナトリウムを抜き取るのに50分かかりますが、それを20分に短縮します。ナトリウムを抜き取ることは、冷却材を抜き取るということで、原子炉の冷却は大丈夫かと思われるかもしれませんが、先ほど述べたように「もんじゅ」には1次系、2次系が各々3ループあり、そのうちのひとつの1次系、2次系ループだけで、原子炉の冷却は十分可能ですから、漏れているループのナトリムを抜いても大丈夫です。
更に、ナトリウムが燃えるのを抑えたり、一旦消えたナトリウムが再び燃えるのを抑えるため,各部屋には窒素ガスを注入できるようにします。
これらの改善については色々な解析や実験を行って、設計しています。興味がある方は、サイクル機構技報No.6に掲載の「高速増殖原型炉もんじゅのナトリウム漏えい対策」を参照下さい。(サイクル機構ホームページの「研究成果・公開資料」の「サイクル機構技報」「もんじゅ」でご覧になれます。http://www.jnc.go.jp/siryou/gihou/main.html)
改造計画の実施により、ナトリウム漏れの安全対策は万全のように思えました。こうした、安全システムは、他国の装置と比べても、やはり先進ですか?
ところで、改造後のシステムでは、以前のような温度計からのナトリウム漏洩の場合、どうなるでしょうか?漏洩速度などを同一条件にして、シミュレートできますか?既に、されているのではないですか。
> 改造計画の実施により、ナトリウム漏れの安全対策は万全のように思えました。こうした、安全システムは、他国の装置と比べても、やはり先進ですか?
ナトリウムが漏れた場合に、漏れを早く見つけ、漏れをとめ、影響を抑えるための色々な対策をしているのは他の国も同じです。今回、「もんじゅ」のナトリウム漏れへの対策を向上するための改善策を検討する段階でも、フランスやロシア、米国の高速増殖炉の対策との比較も行っています。具体的な対策についてフランスの場合との比較を説明します。まず、漏れを検出する方法です。ナトリウムは電気を通しますので、配管や容器の下に電線を置いておき、ナトリウムが漏れた場合には電気の通りかたが変化するのを利用する検出器はフランスも日本も同じです。また、空気と反応して煙のような化合物(エアロゾル)ができます。火災検知器(煙感知器)を設置し、この煙を見つけることは同じですが、「もんじゅ」では、配管と保温材の隙間の空気をサンプリングし、測定器でその空気の曇り具合を見たり、フィルターに通してその差圧の変化で化合物かないか測定することで、微小な漏れがないかどうか常に確認するシステムを持っています。これは、大洗工学センタで開発したもので、感度が高くフランスより優れています。テレビで部屋の様子を確認することは、フランスは以前やっていましたが、もんじゅも今回の改造で、中央制御室から部屋の様子が確認できるようにします。次に、漏れを早くとめるために、ナトリウムを抜き取りことようにしているのは同じです。抜き取り時間はフランスが15分程度であり、今回もんじゅも改造して、20分程度で抜き取れるようにします。ナトリウムの漏れに備えて、鉄板を敷いて置くのも同じです。厚さもフランス5ミリ、もんじゅ6ミリと同じようなものです。漏れた場合のナトリウムの燃焼を抑えるためナトリウム用消火剤を準備していることは同じです。「もんじゅ」では、より積極的に影響を抑えるため、今回の改造で窒素ガスを部屋に注入できるようにしますが、フランスにはありません。
> ところで、改造後のシステムでは、以前のような温度計からのナトリウム漏洩の場合、どうなるでしょうか?漏洩速度などを同一条件にして、シミュレートできますか?既に、されているのではないですか。
今回の改造の結果、2次系でナトリウムが漏れた場合、煙感知器や熱感知器の信号で自動的に換気空調設備が停止し、また、運転員は、テレビカメラの映像もあり、すぐどの場所で、どの程度がナトリウム漏れがあるのか判断できます。直ちに原子炉を停止し、原子炉が安全に停止したことを確認したのち、ナトリウムの抜き取り操作を行います。今回の改造で、この操作も、ひとつのボタンを押すことで、自動的に、抜き取り用弁が順番に開き、タンクにナトリウムが抜き取られます。ナトリウムの抜き取り状況は、タンクや蒸発機内のナトリウムの液位変化で把握できます。ナトリウムの抜き取りが終了したのち、漏れた部屋に窒素ガスを注入し、燃焼を抑えます。このような対応で、ナトリウムの漏れの時間は、約50分程度に抑えられます。前回の事故時の2次系温度計からの漏れは毎時180kg程度でしたので、今回の改造により、同じような漏れがあったとしても(同じような漏れは起きないと考えますが)、漏れ量は約150kg程度と平成7年の漏えい事故時640kgの四分の1以下となります。また、換気空調設備がすぐ停止しますので、外部へのエアロゾルの漏れはほとんどありません。
Hiroさんと弟子丸さん両名の技術的説明から、次のような「もんじゅの緊急事態」における「もんじゅの安全技術の流れ」が考えられます。
「判決」で争点となった、もんじゅの蒸気発生器で多数の配管が甚大な破損が生じる故障を想定した場合、次の現象が予想されます。ただし、もんじゅの条件では、高温ラプチャは発生しないと予想はされているようだが、あえてこうした事態を仮想します。すなわち、何らかの原因で、10本を越えて伝熱管が破損したとします。
1) ナトリウムと水との反応で発生する多量の水素により、蒸気発生器内の圧力が上昇する。
2) この圧力上昇の信号検知により、原子炉をはじめとし、プラントが自動停止する。また水素の自動排出により、その上昇した圧力を低下させる。
3) 2次系配管内のナトリウムは、その後抜き取られる。現状のシステムでは、50分だが、次に計画されている改造後では、20分でそれが完了する。ただし、ナトリウムの配管は3系統あって、ひとつが抜き取られても、原子炉の冷却に支障はない。
4) 原子炉を直接冷却する1次系ナトリウムの配管は、頑丈な中間熱交換器で、2次系配管とは遮断されているので、2次系の故障が1次系に及ぶことはない。
5) 室内ヘ漏れた2次系のナトリウムは、傾斜のある床ライナに沿って流れ、下の部屋に収納され、窒息消化される。
6) 2次配管の部屋にある煙感知器が、この事態を検知し、換気を停止し、空気の供給を断ち、ナトリウムの燃焼を抑制する。また室内のナトリウムの発火は窒息消火される。(改造後?)
7) 室内の監視カメラから、こうした事態の発生を、目視からも確認した中央制御室の運転員は、緊急事態の体制に入る。
8) こうして、もんじゅの自動安全システムおよび運転員の人的な対処により、事態は収束する。
こうした現象と対処なのでしょうか? 何か、追加されることがあれば、補足ください。また誤った理解があれば、訂正ください。
以上から、争点となった「蒸気発生器伝熱管破損事故」で炉心崩壊に至るとは、とても考えにくいと、私は思いました。同時に、もうひとつの争点である「2次冷却材漏えい事故」でいう、全ての冷却能力が喪失する可能性は、否定されると思います。 もんじゅ担当の技術者からの説明やサイクル機構の技術資料から、私は、これらが、もんじゅの安全技術に関する、「もんじゅ判決」に対する技術的事実と、判断しました。
どなたか、サイクル機構の安全技術の説明に、異論があれば、この件につき、発言ください。ただし、ここでは技術的議論に限らせていただきます。 かつ具体的に発言ください。尚、私は、月曜3/3より、つくば出張のため、恐らく、しばらく対応できません。次は土曜日以後になります。)
> こうした現象と対処なのでしょうか? 何か、追加されることがあれば、補足ください。また誤った理解があれば、訂正ください。
私の説明で「設計基準の数倍の伝熱管の完全破断でも蒸気発生器は大丈夫です」と書きましたが、「数倍」は2~3倍というよりも、5~6倍のつもりでした。したがって、仮想的な話しとしては「20~30本を越えて完全破断した場合」としていただければ、幸いです。 また、細かな話しになりますが、伝熱管が真っ二つに割れる壊れ方を「完全破断」と言っており、この時、水の噴き出し量が最も多くなります。現実の壊れ方をみると、それほどスパッと壊れませんから、数本の伝熱管が「破損」してようやく1本の「完全破断」に相当しますので、「完全破断」という用語を使いました。
それ以外については、正確にご理解していただいたと思います。
「もんじゅの緊急時シミュレーション」の確認、ありがとうございました。「20~30本を越えて完全破断した場合」でも安全とは、安心です。
あれから、およそ1週間経ちました。反原子力の方も含む、原子力学会等の皆さんは、「もんじゅ判決」における技術的な事実・まとめ1に、異論はないのですか?
どなたか、これのベースとなったサイクル機構の安全技術の説明に、異論があれば、発言ください。ただし、ここでは技術的議論に限らせていただきます。 かつ具体的に発言ください。
または、同意されるなら、技術的に何か発言をください。積極的にお願いします。科学も技術も真理にもとづいていますが、その成立は民主主義が基本にあると、私は信じています。
こんにちはA.T.です。
私は、高田先生のまとめに異論はありません。
技術的発言ということなので、もんじゅ蒸気発生器(以下SG)と軽水炉SGの役割について補足しようと思います。
まず、原子炉で発生する事故で最も注意を払う必要があるものは、放射性物質の外部への放出です。それを考えた場合、もんじゅSGと軽水炉SGでは役割が異なるので安全審査などでの取り扱われ方は違います。例えば同じ骨折をしても、手、足、頭と部位により重要度が変わるのと同様に、同じSGでもタイプの違う原子炉では、原子炉全体の中での役割が異なります。その違いを説明します。
まず、もんじゅは、炉心の1次系ナトリウムが得た熱を中間熱交換器で2次系ナトリウムに熱だけを伝達し、その熱はSG伝熱管によって水に伝達します。
すなわち、炉心を冷却する1次系ナトリウムそのものが、直接SGに流れることはありません。
従って、安全審査などでの扱いでは、SG伝熱管は原子炉冷却材との境界(バウンダリ)となっていないことから、専門用語では「原子炉冷却材バウンダリ」としての扱いを受けません。SGに破損が生じても、直接炉心への影響はなく放射化した物質が放出される危険性がないということです。(今回の判決では、SG伝熱管の破損により中間熱交換器も破損し炉心まで影響するという仮定に仮定を重ね炉心崩壊が起こると判断されましたが、hiroさんが言うように中間熱交換器に到達するまでに、違う箇所が壊れるか、圧力開放板によって事態が収束しますし、それぞれの機器はかなりの安全余裕をもたせ設計製作されています。)
しかし、軽水炉SGは炉心で1次系冷却水が得た熱をSG内の水に直接伝達します。そのためSGの伝熱管が「原子炉冷却材圧力バウンダリ」となってしまいます。
だからといって、もんじゅSGが軽水炉より安全をないがしろにしているわけではありません。
> 私は、高田先生のまとめに異論はありません。
「もんじゅの蒸気発生器破損に関わる緊急事態は安全に収束する」とのシミュレーションに同意する技術者が1人追加されました。
> まず、もんじゅは、炉心の1次系ナトリウムが得た熱を中間熱交換器
> で2次系ナトリウムに熱だけを伝達し、その熱はSG伝熱管によって水に
> 伝達します。
> すなわち、炉心を冷却する1次系ナトリウムそのものが、直接SGに
> 流れることはありません。
> 従って、安全審査などでの扱いでは、SG伝熱管は原子炉冷却材との境
> 界(バウンダリ)となっていないことから、専門用語では「原子炉冷却
> 材バウンダリ」としての扱いを受けません。SGに破損が生じても、直接
> 炉心への影響はなく放射化した物質が放出される危険性がないというこ
> とです
確かに、もんじゅの安全技術において、中間熱交換器の存在は大ですね。
こんばんは、サイ太です。
私も、異論ありません。
また、A.T.さんにさらに補足します。
Hiroさんが、壊れないように造られたSG伝熱管が壊れるという、前提条件を破った上で、さらに漏洩が検出できず、さらに最大、多目の破損様相を仮定して、ナトリウム水反応事故を想定し、それでも安全設備が機能することを実験的に確認してきているということの説明がありました。
A.T.さんがSG冷却材バウンダリの説明をしました。私は、もっと細かいところの説明になりますが重要なので補足します。
もんじゅ伝熱管では、外側がナトリウムで、腐食し難いので外面からの減肉は起こりにくいこと。また、50MWの蒸気発生器設備の試験後の解体検査でも、顕著な減肉はないことが検証されていることを付け加えます。
本日03.03.11付けの評価の数をまとめました。その他の方も、発言ください。
緊急時シミュレーションに対するもんじゅの安全性に、異論が出ていません。この議論の部屋には、「反対派」の方も参加されているのでしょう。是非、技術的な異論を唱えてください。
6月5-6日、敦賀の「もんじゅ」建設所にて、ネット討論の結論を確認するため、現地での調査を行いました。その報告書を、私のホームページにて公開していますので、みなさまへお知らせします。また、前月には、大洗工学センターでの安全技術を調査しており、それも掲示しています。
たかだ様
こんばんは
以前、このHPを見つけそれ以来ちょくちょくここに来ている者です。
私は、一般人なので、難しいことはわかりませんが、原子力青年ネットワーク連絡会という中の掲示板ではなく、ヤフーなどのオープンな掲示板での議論の方が説得力があるのではないでしょうか?
私の様に、全然関係のない人からすれば、このHPに来ることも無ければ、探すこともありません。(私自身なんで、ここにたどり着いたのやら(笑))
まぁ、変な人も多いですが、それを突破しないといけないのでは?
通りすがり様
> 私の様に、全然関係のない人からすれば、このHPに来ることも無け
> れば、探すこともありません。(私自身なんで、ここにたどり着いたの
> やら(笑))
> まぁ、変な人も多いですが、それを突破しないといけないのでは?
職業柄、私は科学的真実は何かを追求します。その調査結果を出版することの意義を認識しています。専門雑誌以上に、一般科学雑誌やブルーバックスなどの図書の出版は特に意味があると信じています。「知は力なり」です。こうした科学を基礎とした議論が重要ではないですか。
もうひとつ、即効性のある情報発信も重要なので、ホームページの運営や、記者発表も行います。
「議論のための議論」が延々と続くサイトも存在していますが、私にはその時間はありません。尚、顔の見える市民懇談会は、機会があれば参加したいとは思っています。
専門家の方からの返答も集まりだしているので、私からも一言。
(PA的手法としてはそう言う言い方もアリかもしれませんが)
基本的な認識として「常陽」が大きなトラブル無く運転しているのはその通りですが、これをもって「もんじゅ」でトラブルが起きない理由とすることは出来ません。
それぞれ設計が異なるものである以上、「もんじゅ」は「もんじゅ」の安全対策を論じなくてはなりませんし、そもそも「常陽」だって極端に言えば20年の実績が明日の事故を否定するものではありません。
原子炉で一番大切なのは炉心の安全性ですからそれを強調することはわかりますが、結局、要求されているのはプラントの総合的な安全対策であって、一見極めて瑣末な施工の巧拙まで含めた信頼性です。
事業者や国に必要とされるのはそのような認識に立った上で、なお、安全のためにどのような仕組みを作っているかを忍耐強く説明することだと思います。きれいなPR館をいっぱい持っていても、安全性に正面から向き合った討論の場で反対派やマスコミの指摘に詰まってしまったり、同じ内容の繰り返しになるとすれば(現実にそうなっていると私は思います)やはり社会の信頼を得ることは出来ないでしょう。
そうした議論を尽くした上で、あるいは知見が古い部分についてはそれを認めて改造工事や解析の見直しを行うなど、現時点でベストの対策をしていることを十分認識させた上で、リスク論的な考え方を提示し、技術開発への理解を求めて行く事が結局は必要とされているのだなあと思います。
(様々な技術でこんなことに成功した技術はたぶん今までに存在しないでしょう。だから。大変なことを要求していると自分でもわかりますが、もし、原子力がこれに成功すれば画期的なことだと思います)
弟子丸さんの名前を見かけて懐かしくなりました。 まさに平成7年、8年ごろ、西田さんをはじめ、技術課やプラント課の人たちにお世話になったことが思い出されます。
tak さんへ、この枝スレッドでは、技術的議論をしています。観念論・抽象論の議論を否定をするわけではありませんが、それは他の枝スレッドでやってください。YNGの議論はそのほとんどがそれで、技術が全くといっていいほど、見えてきません。私が座長のこの枝スレッドでは、技術をできる限り平易な言葉で議論します。よろしく。
私はサイクル機構で「もんじゅ」に携わっている若手技術者の1人です。もんじゅナトリウム漏洩については、弟子丸さんから回答されたようなので、「常陽」と「もんじゅ」の目的や構造の違いについて少々長くなりますが回答します。
これら2つの炉は、そもそも高速増殖炉を商用の発電炉として実用化するために、スケールアップし経済性などを高めて開発していくという方針は、おそらく周知の事と思います。そのため、「常陽」→「もんじゅ」と出力を大きくしているのですが、スケールアップが完了するとそれまでに開発した炉が不必要になる訳ではなく、その炉の出力や特性に応じた様々な研究開発を進めています。
「常陽」は、FBRの本懐ともいうべき増殖炉としての基本性能をおさえるため、もんじゅ炉心とサイズや出力は異なるもののブランケット燃料を装荷した増殖炉心での試験を実施した後、新型炉開発で必須となる燃料・材料の中性子照射試験が実施できるよう、照射炉心に改造し運転しています。
「常陽」は、その目的から実験炉と呼ばれ炉心の内外に様々な照射試験装置を装荷できる構造となっています。そして、発電せずに炉心で発生する熱は空気と熱交換し大気に放出することで、目的である照射試験の実験条件に大きな影響を与えない様にしています。また、燃料の長寿命化・高出力密度化の研究開発を効率的に行うために、中性子密度を高めるための改造工事(「常陽」MK-Ⅲ計画)を行っています。
一方、「もんじゅ」は発電炉としての実績(ノウハウ)を得ることを主な目的としています。そのため「常陽」と異なり、蒸気発生器でナトリウムと水を熱交換し、タービン発電機により発電する設備を持っています。
大量のナトリウムを用いる高温のプラントという意味では、「常陽」も「もんじゅ」も同じですが、「もんじゅ」ナトリウム漏れの原因は、配管に挿入してある温度計が折損したためであり、蒸気発生器が存在したためではありません。
最初の「常陽」運転実績については、高田先生のご指摘どおりです。「常陽」は、1977年4月24日に初臨界を達成して以来、安全性を損なうような大きなトラブルを起こすことなく安定した運転を続けて26年を迎えました。累積運転時間は2000年6月に約6万1千時間、積算熱出力約50億6千万kWhを達成しています。
また、単なるプラント運転だけでなく、高速炉燃料の限界を見極めるため過酷な条件下での様々な試験を完遂し、世界的にも貴重なデータを取得しています。
とはいえ「常陽」では、この運転実績に「あぐら」をかいて、ただ見守っているだけでなく、実験施設という特殊な事情のなかでも、もんじゅ事故を踏まえた2次系のナトリウム漏洩に係る設備の更なる改善を行うなど、安全に関しては常に進化する努力を行っています。
このようにして得られた知見をもとに、さらに「より良いプラントにしていく」、この努力を怠ることなく実施していくことが「常陽」の実績につながっているのではないでしょうか?
以下、高田先生の書き込みにもありましたが、
> JNCのある方の発言:
>「”公正で独立した”裁判所が両方の言い分を聞き下した判断であろう、もんじゅは本当は危険なのでは?と感じている市民の方々がおられることです。本当に残念だと思っています。」
JNCの中でも、いろいろな意見があり、判決の直後と少し冷静となった今とでは受け取り方が変わってきております。「残念」とは、「分かってもらう事の重要性を認識していなかった」と考えています。
結果論として高田先生が指摘されている「JNCの説明責任」「外部へのアピール不足」を本当に感じております。このため、ホームページ等を利用し、幅広く内外に実績を示すとともに、技術者だからと凝り固まらない、平易な表現を念頭に入れていきたいと思います。
サイ太さん、ようやくの回答ありがとうございます。「残念」の意味については、私は「技術者の気持ち」を、よく理解しているつもりでいます。これについては、触れるつもりはありません。ただし、次回からは、24時間以内に、ご返事ください。よろしく。
弟子丸さんの説明に、
「ナトリウム加熱の蒸気発生器については、やはり大洗工学センタに「もんじゅ」用の蒸気発生器の1/5の試験機をつくり、性能、耐久試験をおこなっています。」とありますが、これは常陽に取り付けての試験だったのですか?また、「もんじゅナトリウム漏れ」以前から、実施されていたのですか?
高温のナトリウムとこの蒸気発生器との間で、トラブルはなかったのですか?この辺の説明をお願いします。(FBRなどの英文字略語は極力使用しないでください。この議論は、専門家のためにあるのではありませんので。)
次に、「もんじゅのナトリウム漏れ」の原因となった温度計に関連して、質問します。「常陽」にも同様の温度計が設置されていると想像しますが、どうなのでしょうか。どうちがったのですか?形状・構造は同じですか?なぜ、「常陽」では、類似のトラブルがなかったのですか?
もんじゅについては多少は見聞し、思い入れもあるので、やはりでしゃばって見ます。
【事象を事故と言う理由】
ナトリウム漏れは確かにINESでは事象(incident)に分類されるもので、そもそも暫定分類では0+くらいになっていたと思います。
しかし、事故の発生当時、マスコミは動燃が基本的に起こりえないとPRしていたナトリウム漏れが日本の高速増殖炉で初めて起きたこと。それによって原子炉の運転を緊急停止(スクラムとは違うが)せざるを得なくなったこと。この事象が日本のプルトニウム政策に与える重要性などを根拠にこれを事故と呼びました。
これは平成3年に起きた関西電力美浜原発2号機の蒸気発生器細管破断の時とほぼ同じ反応でした。しかし、この時は関西電力側や国の機関はINESの分類を根拠にこれをあくまでも事象と呼び、事故として扱うマスコミと対立しました。また、地元にも陳謝を繰り返しつつもあくまでも「事象」と言う言葉にこだわる事業者への苛立ちがあったことは否めません。
さて、平成7年の事故の直後、旧動燃もナトリウム漏れを「事象」と呼び、当時の福井県議会を対象に行われた説明会で科技庁から出向していた副理事長が「事象の概要は・・・」と説明を始めようとしました。このとき、議員側が「地元の社会認識を無視した事象と言う定義は許されない」と大騒ぎをし、議場が騒然となったため説明が中断。再開の時点で副理事長が「事象を事故と訂正します」と発言。以後は事故として説明を終えました。以来動燃ではこの出来事を「事故」と言う呼び名で表現しています。
(ちなみに、資源エネルギー庁の総合パンフレット「原子力発電」などでもINESの説明図で通産省時代から「もんじゅナトリウム漏れ事故」と言う言葉を使っています。ずっと事象と言う言葉を使っているのは私の知る限り東大の近藤駿介教授などわずかな方ですね。このことは社会に注目される技術が、いかに技術の言葉だけで議論がしにくいかと言うことを象徴的に示していると思います)
【常陽ともんじゅについてのあれこれ】
大洗にあるもんじゅの蒸気発生器の試験装置は建屋全体の高さが20メートルくらいのものすごく大きなもので、附属のナトリウムループ(ナトリウムが流れる擬似配管)を使って単体で試験を行う装置です。ナトリウム漏洩の試験をするとものすごく大きな音が出て、反応で出た水素ガスが燃焼するのが見えるようです。(こういう実験を沢山やっていたのは何せ大昔の事らしく、私も記録映画を見たことしかありません)
少なくとも、ウンコラと抱えて持っていって常陽にくっつけてみると言うようなものではありません。
この試験装置でのトラブルと言う話は聞いた事がありません。
興味があるのでJNCの方の説明があれば私も聞きたいと思います。
温度計は「常陽」にも設置されていますが、形は「もんじゅ」のものとは全く異なります。「もんじゅ」は同心円状に筒を伸ばしたように旋盤で削ってありますが、「常陽」では同じ旋盤加工でも絞りをつけて清酒ビンのような形に作りこんであります。
また、配管の中に突き出す長さも常陽のほうが短かったはずです。このことは当時事故原因の究明仮定でも大きな話題となり、結局流力弾性振動と言う現在公に言われる原因が提示されることとなりますが、そもそも、何で温度計を(正確には温度計の鞘)そのような形に削り込んだのかについては結局、その後の報告書等でも明快な説明が無く終わったように思います。
(あの事故を巡っては未だに温度計の設計におけるASME(米国機械学会規格)の参照状況と知見理解とか、事故時の停止操作のやり方はなぜああなったのかとか、議論したら面白いテーマはいくつもあるのです。ただ、本当にセンシティブな問題で、個々の技術者の方にそう言う話を期待するのはやはり限界があろうなと言うのが、あの問題に現場でかかわってきた私の今の認識です。
この点、いささか前言と矛盾する点があるかもしれませんね)
【常陽ともんじゅについてのあれこれ】
大洗にあるもんじゅの蒸気発生器の試験装置は建屋全体の高さが20メートルくらいのものすごく大きなもので、附属のナトリウムループ(ナトリウムが流れる擬似配管)を使って単体で試験を行う装置です。ナトリウム漏洩の試験をするとものすごく大きな音が出て、反応で出た水素ガスが燃焼するのが見えるようです。(こういう実験を沢山やっていたのは何せ大昔の事らしく、私も記録映画を見たことしかありません)
少なくとも、ウンコラと抱えて持っていって常陽にくっつけてみると言うようなものではありません。
この試験装置でのトラブルと言う話は聞いた事がありません。
興味があるのでJNCの方の説明があれば私も聞きたいと思います。
温度計は「常陽」にも設置されていますが、形は「もんじゅ」のものとは全く異なります。「もんじゅ」は同心円状に筒を伸ばしたように旋盤で削ってありますが、「常陽」では同じ旋盤加工でも絞りをつけて清酒ビンのような形に作りこんであります。
また、配管の中に突き出す長さも常陽のほうが短かったはずです。このことは当時事故原因の究明仮定でも大きな話題となり、結局流力弾性振動と言う現在公に言われる原因が提示されることとなりますが、そもそも、何で温度計を(正確には温度計の鞘)そのような形に削り込んだのかについては結局、その後の報告書等でも明快な説明が無く終わったように思います。
(あの事故を巡っては未だに温度計の設計におけるASME(米国機械学会規格)の参照状況と知見理解とか、事故時の停止操作のやり方はなぜああなったのかとか、議論したら面白いテーマはいくつもあるのです。ただ、本当にセンシティブな問題で、個々の技術者の方にそう言う話を期待するのはやはり限界があろうなと言うのが、あの問題に現場でかかわってきた私の今の認識です。
この点、いささか前言と矛盾する点があるかもしれませんね)
thinkです。私もでしゃばりですが、(主として技術者を対象とした)技術的な内容ならば、以前、紹介した技術的な内容を含むホームページで公開されています。しかし、高田先生が仰る「平易」な表現ではありません。
サイ太さんへの返信として24時間以内に回答とのリクエストをされていますが、一方、JNCは専門家の集合体であり、個々人のスキルとして万人が【平易な表現力に優れている】とは思えません。なので、24時間以内に回答することを先ず優先し、その中身が十分でなければ、それはサイ太さんのスキルでは力が及ばなかったとし、ペナルティは追加説明の義務づけだけとしては如何でしょうか?
> 弟子丸さんの説明に、
> 「ナトリウム加熱の蒸気発生器については、やはり大洗工学センタに「もんじゅ」用の蒸気発生器の1/5の試験機をつくり、性能、耐久試験をおこなっています。」とありますが、これは常陽に取り付けての試験だったのですか?また、「もんじゅナトリウム漏れ」以前から、実施されていたのですか?
> 高温のナトリウムとこの蒸気発生器との間で、トラブルはなかったのですか?この辺の説明をお願いします。(FBRなどの英文字略語は極力使用しないでください。この議論は、専門家のためにあるのではありませんので。)
大洗工学センター公開ホームページにある研究開発内容【高速増殖炉(FBR)の研究開発 】に種々のR&Dが記載されています。
http://www.jnc.go.jp/zooarai/kaihatu_naiyou/rad_fbridx.html
また、どんな施設で、どんな事をやってきたかについては、同ホームページの研究開発施設に記載されています。
http://www.jnc.go.jp/zooarai/sisetu/sisetu_index.html
> 次に、「もんじゅのナトリウム漏れ」の原因となった温度計に関連して、質問します。「常陽」にも同様の温度計が設置されていると想像しますが、どうなのでしょうか。どうちがったのですか?形状・構造は同じですか?なぜ、「常陽」では、類似のトラブルがなかったのですか?
常陽公開ホームページにある20周年記念報告書【4. ナトリウム漏洩対策の強化】より
http://www.jnc.go.jp/zooarai/joyo/technical/joyo20th/section3/bun3-2.htm
> think さん
たぶん、ご紹介されたHPの内容はたぶん、たかだ先生もお読みになっていると思うのですよ。 先生があえて目線を下げた質問をしているのは、HPの内容を包括してさらに具体的な試験の内容や技術者としての”手応え”なども含めた情報を非専門家向けのの平易な言葉で要求したいと言うことなのかな?
この辺の要求に応えることが原子力界は出来ていないし、また、難しいなと感じているところです。
> 弟子丸さんの説明に、
> 「ナトリウム加熱の蒸気発生器については、やはり大洗工学セン
タに「もんじゅ」用の蒸気発生器の1/5の試験機をつくり、性能、耐久
試験をおこなっています。」とありますが、これは常陽に取り付けての
試験だったのですか?また、「もんじゅナトリウム漏れ」以前から、実
施されていたのですか?
回答が遅れましてどうもすみません。回答が長くなりますので、分割して投稿します。
先生ご指摘のナトリウム加熱型蒸気発生器は、「もんじゅ」用の試験設備として製作されたもので、常陽とは別の試験設備です。発熱部は、核熱の代わりに液化天然ガスを燃やして加熱する方式とし、1次系、2次系および水蒸気系を有しており、水蒸気系に設置されている冷却塔で除熱すると言う試験装置です。蒸気発生器の試験は、昭和49年に試験運転が開始され、各種性能評価、プラント制御性、事故時挙動特性および信頼性実証試験などを行っております。
蒸気発生器については、高い信頼性が要求され、高速増殖炉プラントの経済性に大きな影響力を持つことから、国産技術による自主技術開発が不可欠との認識の下に、手厚く研究開発が進められて来たという経緯があります。
Takさんの言われている「蒸気発生器の試験装置」は、多分、蒸気発生器安全性総合試験装置、通称「SWAT-3」と呼ばれているもので、昭和50年に建設され、大規模なナトリウム-水反応が生じた際に、圧力開放系が有効に作動して2次系の内の各機器の健全性が確保されることを実証するための設備です。
> 高温のナトリウムとこの蒸気発生器との間で、トラブルはなかっ
たのですか?この辺の説明をお願いします。(FBRなどの英文字略語は
極力使用しないでください。この議論は、専門家のためにあるのではあ
りませんので。)
大洗のナトリウム試験施設では、初期の頃にはナトリウム配管溶接部からの小さなナトリウム漏れなどの経験はあったように聞いておりますが、このナトリウム加熱型蒸気発生器(50MW蒸気発生器試験施設)の試験運転期間(約10年ぐらい)を通じて、特筆すべきトラブルはありませんでした。特に、伝熱管が破損してナトリウムと反応するトラブルは起きておりません。本試験装置は、試験終了後、解体検査を実施し、主要機器設備の部材の切り出し、材料検査を実施し、外見上及び材料検査からの材料損傷、材料強度の低下の様子もないことが確認されております。現在は、蒸気発生器試験設備の一部である過熱器が、内部構造を紹介するための陳列物として敦賀市のもんじゅサイトそばにあるPR館「エムシースクエア」に展示されております。
なお少々見づらくて申し訳ないですが、「エムシースクエア」のホームページ(http://www.jnc.go.jp/zturuga/mcs/mcs2.html)中程の「展示コーナー」右上部分に、この蒸気発生器断面の写真があります。
早速の回答ありがとうございます。
常陽とは独立した国産の蒸気発生器を開発し、その運転試験などを実施したとの回答をいただきました。 技術開発は、ひとつひとつ積み上げていくものなので、順当な手順だったと理解できます。
「事故時挙動特性や信頼性試験」では、ある程度過激な条件も行うであろうから、そうした時に、異常が発生しても、それも実験の内ですね。
そこで、この蒸気発生器の運転試験の実績から、今回の判決であった1本の伝熱管の破損が、ナトリウムと水蒸気との反応により、広範囲の伝熱管が次々と壊れる・連鎖反応的破壊(高温ラプチャ型の破損)の発生につぃての技術的見解をお聞かせいただけますか?(サイ太さん)
大事なことは、その発生確率が低いことを証明するだけでなく1本の破壊時の防護策だと思います。その辺は、どうでしょうか?もんじゅの蒸気発生器の構造や防護システムから説明ください。(弟子丸さん)
先日、別スレッドに書き込みした、サイクル機構若手職員のA.T.です。
目立たないところに書き込んでしまったため、お気づきない方は「科学技術立国再生に黄色信号点滅 もんじゅ判決で思うこと」スレッドのNo.457をご覧下さい。
サイクル機構の大洗工学センターには、水をわざと伝熱管から漏洩させ、ナトリウムと反応させる試験装置、”SWAT”( Sodium Water Reaction Test)というものがあります。この“SWAT”にもんじゅのモデルを作り、実際の伝熱管を用いて要素実験を行っております。実験は全部で19回(Run-19)(小規模のものは100回程度)行っており、それぞれパラメータを変更しています。19回の内、Run-16、17、19が高温ラプチャが発生すると思われた中リーク(水漏えい率:数十g/s~数kg/s)試験です。(Run-15までに小リーク(水漏えい率:~数十g/s)、大リーク(水漏えい率:数kg/s~)の試験を行い高温ラプチャが発生しなかった経緯があります。)Run-16では、伝熱管内に実際に水を入れたものとガスが入っている模擬管を配置した試験で、水を入れたものは高温ラプチャせず、ガスが入った模擬管が破断を起こしました。そこで、模擬管を無くし、もんじゅの実環境に合わせ、より精度をあげた確証試験をRun-17、19で実施したところ高温ラプチャは発生しなかったので、高温ラプチャは発生しないと実験結果より評価しています。
とは、言うものの、海外での事故事例から高温ラプチャを無視することはできず、高温ラプチャが発生してもプラントが安全に停止するように対策を講じております。水とナトリウムの反応によって発生する水素の圧力が一定値以上になれば、圧力を開放する圧力開放板(ラプチャディスク)を設置しております。また、実験では起こらなかった高温ラプチャが万が一発生した場合でも、2本の破断で収束するという結果に余裕をもたせ、4本の破断が起こった場合でも外部に被害が及ばない構造を蒸気発生器に持たせているというのが、私の認識です。ここまででもお分かりとは思いますが、何重にも安全側の評価をしています。残念ながら、反対派の方からは最後の4本の高温ラプチャがもんじゅでも想定されており、海外では数十本の破断事例があるからもんじゅは不十分で危険だというご意見をいただきます。上記説明は何度も行っていますが、ご理解させられなかったのは残念です。
どなたか、間違いがあればフォローお願いします。
No473~475で弟子丸さんとhiroさんが私より、より詳しく説明していました。(当然私より、彼らの方が正確です。)
よく、読まずに回答してしまい申し訳ありませんでした。
複数の技術者の方々からの回答が、一致すると信頼性が増すので、結構だと、思っています。多少食い違いがあても、公開討論のなかで、すり合わせがあれば、尚、結構です。ありがとうございました。
こんにちはA.T.です。
先日、hiroさんに高温ラプチャについて、お話を伺い、回答できると思ったのですが、早とちりしてしまい誤解を招くような不正確な情報を投稿してしまったので訂正いたします。申し訳ございませんでした。
(間違い箇所)
①高温ラプチャは発生しなかったので、高温ラプチャは発生しないと実験結果より評価しています。
(訂正)hiroさんが書いているように
『当時の実験結果では、高温ラプチャが起こらないことを確認し、現時点では、高温状態での材料データやナトリウムと水の反応による加熱状態における熱伝達率などから、伝熱管の破損を計算で評価できるまでになっており、その評価結果でも、「もんじゅ」の条件では高温ラプチャは発生しないという結果になっています。』
(間違い箇所)
②実験では起こらなかった高温ラプチャが万が一発生した場合でも、2本の破断で収束するという結果に余裕をもたせ、4本の破断が起こった場合でも外部に被害が及ばない構造を蒸気発生器に持たせているというのが、私の認識です。
(訂正)こちらもhiroさんが書いているように
『蒸気とナトリウムとの反応で引き起こされる激しい腐食による減肉現象(ウェステージ型破損)のメカニズムで最大2本まで破損が拡大する可能性があるとの結果でしたので、余裕をもたせて、4本の伝熱管の完全破断が生じても蒸気発生器は大丈夫のような設計となっています。』
最後に伝熱管の破損モードについて簡単に説明します。hiroさんの投稿にもありますように、
①蒸気とナトリウムとの反応で引き起こされる激しい腐食による減肉現象(ウェステージ型破損)
②反応による高温とそれに伴う伝熱管材料の強度低下による破裂現象(高温ラプチャ型破損)
に分類されます。
次に、「もんじゅのナトリウム漏れ」の原因となった温度計に関連して、質問します。「常陽」にも同様の温度計が設置されていると想像しますが、どうなのでしょうか。どうちがったのですか?形状・構造は同じですか?なぜ、「常陽」では、類似のトラブルがなかったのですか?
構造は似かよったものですが、形状に少し差があります。「常陽」も「もんじゅ」も配管の中ほどまで突っ込んで測定する、熱の変化に注意する、流れによる振動に注意する、などの考え方は同じであると思います。常陽の場合、配管が呼び径12インチ(直径:約320mm)という口径で、小さいことから、同じように配管の中ほどまで突き出しても、「もんじゅ」の2次系温度計に比べて、温度計の剛性(しなり難く、がっちりしていること)が高く、振動が起こり難かったものと考えられます。「もんじゅ」の場合は、配管口径22インチ(直径:約560mm)と大きい上に、正確な温度を測りたいという機能上の要求条件を優先させたために、突っ込み深さが深く、かつ温度応答が良いように、センサー部分の鞘管の板厚を薄くした上に、薄く削った部分と厚く残した部分の境界を鋭い角にしたこと、が重なって振動しやすく、壊れやすい形状となったためと考えられます。
この常陽ともんじゅの二つの事例から、適切な温度計の構造を造れば、この温度計破壊のトラブルは回避できるという結論ですね。ありがとうございました。この失敗を次の成功に結びつければ、良いわけです。技術開発としては、ごく普通のことです。
サイ太です。
今回、高温ラプチャの件については、私のような若輩者が回答する前に過去に実験に携わったhiroさんから既にNo.475で回答されており、私の方からそれ以上に追記することもありません。申し訳ないです。
第一人者・実施者の発言は、最重要です。
核エネルギーの平和利用では、日本を先行しているフランスについて質問があります。もんじゅのような高速増殖炉、フェニックス、スパーフェニックスがあります。前者は現役で、後者は停止しているのですね。日本の技術開発のひとつの参考になるかと思います。もちろん、それらを越えるべく、日本の技術陣の挑戦こそ重要と認識しています。サイクル機構の技術者は、これに詳しいと思います。説明くだされば、幸いです。また、どこかに、情報サイトがあれば、紹介ください。
フランスは、スーパーフェニックスをあきらめたのに、日本はとの声がしばし聴かれてきます。その理由は、技術的なことではないのだと、フランスの原子力開発担当者が発言したことを、憶えてはいますが。
原型炉フェニックス(電気出力25万kW ; 1973年臨界) は、10年間の寿命延長計画に基づき設備改造工事を進めており、本年3月に運転を再開し、その後約5年間かけて、従来から進めている高性能燃料材料開発や、プルトニウム燃焼研究「CAPRA計画」とマイナーアクチニドの燃焼及び長寿命核分裂生成物(LLFP)の核種変換研究「SPIN計画」などの照射試験を行う予定です。
実証炉スーパーフェニックス(電気出力124万kW;1985年臨界)は、政治的判断から1998年12月に廃止が決定され、2025年頃完了を目途に廃止措置作業が進められています。
ナトリウム冷却型高速炉については、既に上記のような開発実績があり、今後のフランスの高速炉に関する研究開発は、水素製造など発電以外の用途にも利用可能なガス冷却型炉の開発に移行するとされています。
スーパーフェニックスの動向につきましては、少々専門的ですが、「原子力百科事典ATOMICA」の「高速増殖実証炉スーパーフェニックスをめぐる動き」
http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/owa/display?opt=1&term_no=14-05-02-08
に記載されています。