平成15年(行ヒ)第108号 原子炉設置許可処分無効確認等請求事件

判決理由骨子

内閣総理大臣が動力炉・核燃料開発事業団に対してした高速増殖炉「もんじゅ」に係る原子炉設置許可処分は、それが依拠した原子力安全委員会及び原子炉安全専門審査会による安全審査の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があるということはできないから、違法であるとはいえず、同処分が無効であるということはできない。


平成15年(行ヒ)第108号 原子炉設置許可処分無効確認等請求事件

判決理由骨子

  1. 内閣総理大臣が昭和58年6月27日に動力炉・核燃料開発事業団に対してした高速増殖炉「もんじゅ」に係る原子炉設置許可処分は、以下のとおり、それが依拠した原子力安全委員会及び原子炉安全専門審査会による安全審査の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があるということはできないから、違法であるとはいえず、同処分が無効であるということはできない。
  2. 2次冷却材漏えい事故に対して床面に鋼製のライナを設置することにより漏えいナトリウムとコンクリートとが直接接触することを防止するという安全対策を行うことを内容とする高速増殖炉「もんじゅ」の基本設計は、不合理であるとはいえず、また、原子力安全委員会の判断に基づき、上記基本設計のみが原子炉設置の許可の段階における安全審査の対象となるべき事項に当たるものとし、床ライナの板厚等の腐食防止対策や熱膨張により壁と干渉しないような具体的施行方法は、設計及び工事の方法の認可以降の段階における審査の対象に当たるものとした主務大臣の判断に不合理な点はない。したがって、原子力安全委員会等における2次冷却材漏えい事故の安全審査の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があるということは出来ない。
  3. 動力炉・核燃料開発事業団が行った高速増殖炉「もんじゅ」についての蒸気発生器伝熱管破損事故に係る安全評価のための解析条件は、伝熱管破損伝ぱの機序として高温ラプチャ型破損ではなくウェステージ型破損が支配的であるという考え方を基に設定されたものであった。しかし、本件原子炉施設においては伝熱管からの水漏えいを検出して伝熱管内の水または蒸気を急速に抜くなど、高温ラプチャ型破損の発生の抑止を期待することが出来る設計となっており、現在の科学技術水準に照らしても、上記解析条件が不相当であったとはいい難く、この解析条件を前提に蒸気発生器伝熱管破損事故を想定してされた解析の内容及び結果が審査基準に適合する妥当なものであるとした原子力安全委員会等の審査、評価に不合理な点はない。したがって、この点についての安全審査の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があるということはできない。
  4. 原子力安全委員会等による高速増殖炉「もんじゅ」に係る1次冷却材流量減少時反応度抑制機能喪失事象の安全審査において、遷移過程の事象推移についての評価を欠くと解するのは相当でなく、上記安全審査における遷移過程についての評価に不合理な点はない。また、動力炉・核燃料開発事業団が行った1次冷却材流量減少時反応度抑制機能喪失事象における炉心損傷後の炉心膨張による最大有効仕事量の解析を妥当なものとした原子力安全委員会等の判断に不合理な点を見いだし難い。したがって、原子力安全委員会等における1次冷却材流量減少時反応度抑制機能喪失事象の安全審査の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があるということはできない。