東京に核兵器テロ!
山陽放送ラジオ新刊紹介 2004年7月
A:アナウンサー
T:高田 純
- A:東京に核兵器テロ。非常にショッキングなタイトルの本が講談社から出版されました。放射線防護の専門家でいらっしゃいます札幌医科大学の高田純教授がお書きになりました。今朝は高田先生にお話をうかがいます。おはようございます。
- T:おはようございます。
- A:高田先生、「東京に核兵器テロ!」、非常に怖いタイトルですね。
- T:ええ。もともとこのテーマの研究を開始したのが2001年、あのニューヨークにジェット旅客機がつっこんだ9.11テロ事件がきっかけとしてありました。あれがきっかけで核兵器テロを直感しまして私の調査が始まりました。
- A:全世界で核被害の現地を研究・視察をされてきて、本当にご専門でいらっしゃいますけれども、そのシミュレーションという形で冒頭東京のホテルの一室でテロリストが小さな核兵器を爆発させるという小説でこの本は始まっています。
- T:はい、出発はそうですね。世界、今9.11以降、米国がアフガニスタン、イラクと反撃を加えて、アルカイダの首謀者がまだ捕まっていないわけで、現在日本も、そのアルカイダの声明によると、テロ攻撃の対象国となっている。日本がねらわれるとすると、やはり首都というのが私たちの心配することで、東京で最悪の事態を想定、あるいはそういうことを考えておくというのは専門家として大事ではないかと、こう思っているわけです。
- A:今、いとも簡単に一人のテロリストがホテルの一室に入って核の爆弾を起動させますね。
- T:ええ。
- A:こういう小さな核爆弾というのはテロリストの手にあるかもしれないんですか?
- T:それが、小型の核兵器が開発されていると、ソ連崩壊後、ロシアのそういった軍事担当者が発言したんですね。ソ連崩壊後、84個のスーツケース型核兵器が行方不明になっているというんですね。テロリストが核兵器を入手するには方法が二通りあります。1つはすでに存在している、大国が開発した小型核兵器。持ち運び可能な携帯型核兵器。これが誰かによって盗難され、テロリストに売却されてしまうというシナリオ。もう1つは危険国ですね。そういった危険国の中で独自に核兵器を開発している。この二通りあります。
- A:ハリウッドにも「ピース・メーカー」という小さな核の爆弾によるテロをテーマにした映画がジョージ・クルーニー主演でありましたね。
- T:ありました。あれは今言った前者の場合ですね。盗難して核兵器が中東の方へ売却されていく、そういった話でした。
- A:しかもその核爆弾というのが、水筒のような大きさ。
- T:そうです。ピース・メーカーという映画は私も何回も見ているわけですけれども、あの中で描かれているのはいわゆる子供が遠足に持っていくような水筒、子供のリュックサックに入れちゃうようなサイズの水筒ですね。あれがあの映画で描かれているわけですが、あの映画の技術顧問はアメリカのそういった核兵器のソ連の調査の専門家だったわけですね。そういった人が技術的な、あのピース・メーカーでニューヨークにテロリストが核兵器を持ち込むという映画の技術顧問をしておりますので、描かれた核兵器のサイズは妥当な根拠があるのかな、と。
- A:「今ここにある危機」と言ってもいいわけですね。「東京に核兵器テロ!」というのは我々にもわかるように小説仕立てで、東京のホテルの1室で爆発するんですが、すごい被害ですね。
- T:そうですね。広島でも、長崎でも戦闘機から投下しましたね。あれは技術的には大変なことです。ある場所をねらって、というのは。でも兵器が小型化してしまえば、ちいさなカバン、トランクに入れて運べます。テロリストは新幹線に乗ってくるかしれませんね。
- A:広島では空中、600m上空で爆発しましたが、地上で爆発すると大きな被害が予想されるんですか?
- T:そうなんです。意外に思われるかもしれませんが、地上で爆発した方が、核の灰の被害はでかいんです。あの火球、核分裂した100万度のガス状の気体ですが、初めから上空にあります。これは高温、100万度ですが、どんどん自動的に天空に上っていきます。その核の灰は簡単に地面に落下しないんです。ところが地上で爆発しますと地上の地面、実験場の調査でわかっているのですが、火球が接触しまして、地面をえぐりながら地面を溶かして、蒸発して土の成分と核の灰が入り混じった汚い土砂が上空数千メートルにわたって土壌を巻き上げた形で、汚い核の柱ができてしまうんです。これが真下にも落ちますし、どんどん風にながされて落下してくるんです。この現象をフォール・アウトといいまして、風下にいる人達が核の汚い灰にまみれてしまうんです。これによる被曝が考えられまして、その被曝の距離が、10km以上です。
- A:熱線によってあっという間に人間なんて原子レベルで蒸発してしまうとか。
- T:人体が、広島で影が残ったという話ですね。あれは上空600mですね。地上で爆発した場合はもう目の前で100万度の火球がでてくるわけです。近傍にいた人はとてつもない熱をうけて、あの衝撃波の粉砕もありますし、その熱を吸収して体全体が燃え上がって蒸発してしまいます。
- A:太陽の中心くらいの温度だと書かれていますね。都市の今持っている核テロがあった時の怖さみたいなものが本当に良くわかるんですが、先生がその中で何のために書いたかというと、身を守るためだそうですね。
- T:まずそうです。放射線防護の専門家として核被災地を調査しながら常々考えています。まず最初に、広島を振り返るのが一番いいんですが、広島では都市の中心、上空600mで爆発するわけですが、半径500m以内で相当数の人が死んでいます。あのグランド・ゼロ、爆心地ですね、半径500m以内で70名以上の人が奇跡的に生存していたんです。どうして生存できたか調べていきますと、地下室にいた、あるいは地下室でなくても石でできた建物、がっちりした建物が戦前いっぱいあったんですが、そういった建物の中、奥の方にいた人が助かっています。まず強烈な衝撃波を建物が防いでくれた。熱線もそういった分厚いものが遮断してくれた。そしてもう1つ放射線も遮断してくれた。これによって助かった人が70名以上いた。もう1つ広島型じゃない、空中でなく地上爆発の場合、チェルノブイリのような汚い核の灰が空を飛んで、降ってくる。空から降ってくる放射性物質、核の灰にふれないようにすることです。
- A:なるほど。
- T:屋内にいればそういった汚い核の灰が体に付着することもありません。窓を閉めていれば吸い込むこともありません。万一窓ガラスが割れても、マスク、なければハンカチ、タオルをたたんでマスク代わりにして吸い込みを防止する。地上核爆発の核の地獄の中では放射線防護は可能なんですね。地表を逃げてはいけない。地下街があれば、地下街。地下室、そうでなければコンクリートの建物の奥に入る。そして中にいることによって外では放射線は強いが、中では弱い。地下室の奥で外の一万分の一、コンクリートの比較的頑丈な建物の1階で外の1/10、2階で外の1/100に弱まっています。ですから最初の汚い核の灰が降ってきたときには、最初の1時間以上屋内に退避。もしあなたが東京にいたらまず1時間以上屋内退避。それから地上を伝って逃げず、ですから地下鉄に乗って郊外へ逃げる。最初に爆発して核の灰が降っているときに外を走ったらそれだけで死亡の確率は非常に高いですが、核の灰が落ち着いて、1時間以上してから地下鉄で逃げる。これで私の計算では被災者の70%以上が救済されます。
- A:そうですか。
- T:もう一つこの本で訴えているのはこういったことが起こらないようにすることです。政府にがんばっていただく。核兵器を持ち込むことを阻止する。放射線検知器を日本国内のいろいろなところに用意する。海外、ヨーロッパや米国では国境、空港、高速道路の出入り口に目に見えない形で置かれています。日本でもやればできます。アメリカで使っている検知器は日本製のメーカー製なんです。
- A:そうなんですか?
- T:日本の浜松ホトニクスという会社が作っています。世界で最高の感度を持つ検知器はノーベル賞、あのノーベル物理学賞を受賞した小柴先生、あの先生も使っている検知器です。これが対核兵器テロとして活躍していると聞いています。
- A:東京に核兵器テロ。ひょっとしたら起こるかもしれないことで、怖がってばかりいてもいけない。これを読んでおけばひょっとしたらこれが核兵器によるテロの爆発によるものか判断する1つの自分の中の意識を高めることができると思います。ひょっとしたらこの1冊が命を救ってくれるかもしれないし、国を救ってくれるかもしれないと思いました。
- T:ありがとうございます。
- A:ぜひ一度手にとってお読みいただきたいと思います。講談社が発行しました「東京に核兵器テロ!」。放射線防護の専門家、札幌医科大学教授の高田純先生がお書きになりました。今朝は高田先生にお話をうかがいました。ありがとうございました。
- T:ありがとうございました。