世界の放射線被曝地調査
山陽放送ラジオ新刊紹介 2002年1月28日
A:アナウンサー
T:高田 純
- A:さてそれではノンフィクションの御紹介です。今日は放射線被曝についてのリポートです。タイトルは「世界の放射線被曝地調査」。広島大学、原爆放射能医学研究所助教授高田純さんが講談社・ブルーバックスから出版しました。高田助教授は、アメリカの水爆実験の舞台となりました南太平洋の島々のほか、世界を震撼させた原子力発電所チェルノブイリ事故、さらに臨界事故のあった東海村までを自ら測定してまわっています。いわば足で稼いだ迫真のリポートということですが、その高田助教授にうかがいます。高田さん、お話よろしくお願いします。
- T:よろしくお願いします。
- A:各地の被爆地調査ということになるわけですけれども、この章にもまとめられていますが、放射線被爆地の回復云々ということを考えても、その現地の方って食べ続けますよね。
- T:そうですね。ロシア政府もそこはある程度の危険性があるから別な土地を用意して移住するように勧めています。ただ住民にとってはそこで生まれて育って、自分の農地もあるわけですね。政府の指示に従わないで、やっぱり愛着をもって住みたいという方もいらっしゃるわけです。小さなお子さんはいないんですが、年輩の方ですね、お年寄りが住んでいるわけで、その人達の被曝がどうなっているか、ということが重要で調べたんですが、体外から被曝するものと、食品を食べたりすることによる内側から被曝があります。1997年の段階では17ミリシーベルトありまして、いわゆる日本の法律でも1ミリシーベルトを超しているんですが、公衆の被曝としては。その量はですね、日本の法律、別な法律では、原子力施設で働く人の被曝の限度は最大50ミリシーベルト、5年間平均として20ミリシーベルトといわれていて、その量よりは少ない。ただこの場合は自らの意志で暮らすということで、政府がそこに住めという命令もできない。住まれている人達の被曝レベルは、現在日本人が被曝する場合というのは、自然環境から被曝するものと日本の場合、医療被曝があります。みなさん胸のレントゲン撮影、胃の検診、年輩になると胃の検診、バリウムとかを飲んだりしますね。もろもろの検診がありますが、そのレベルに近い。
- A:今回の場合はその事故地の調査もそうですが、東海村の臨界事故という客観的にマスコミの報道を見ていても信じられないような事故がありますね。こういう部分を防いで欲しいという気持ちも高田さん、当然大きいわけでしょうね。
- T:そうなんです。私、以前は日本も核災害は起こらないという前提で原子力開発があって、みなさんよく耳にする原子力安全神話という言葉に表れていたわけですが、当初より私たち専門家の中ではもちろん、日本の事故の起きる確率は低い、けれども万一起こったときにどうするんだといった備えはしておかなければいけないと思っていたんですね。そんな矢先に1999年、東海村の事故が起こったわけです。
- A:やっぱりびっくりしますよね。そういう反省の部分は当然出てこなければいけないわけですが、日本はそういう意味でいうとこの先どうでしょうか?
- T:それはですね、ようやくそういった事故を契機に、これは原子力を専門に担当している人達だけではなく、日本全体の世論もそうなってきたわけで、これ以降、政府もそうですが、原子力開発に従事している分野に携わっている人々もああいったことを反省して、原子力防災に今、力を入れてきて、いろいろな手はずをしつつあります。
- A:今回世界の被曝地調査というタイトルがついているわけですが、考えてみると人間の体に害を及ぼすような放射線は人間自身が作り上げていることにもなりますね。
- T:それはですね、放射線とは何か、ということについて日本人はあまり知らないんですね。私もそうでしたけど今インタビューをされているあなた自身も学校教育ではほとんど受けていないんです。
- A:受けていませんね。
- T:習ってないですね。ですから、ほとんど科学的知識がないまま利用されているという現実があります。原子力発電ばかりでなく病院でも使われています。本当は地球自身も放射性物質を持っています。天然にウランがあるから原子力が発明されているわけで、宇宙からも放射線は降り注いでいます。どういった被曝レベルが基準で、それを超えるか、超えないか?どのくらい超えるのか?どれだけ以内なのか?そういった放射線ないしは放射線被曝に対する国民の知識が大事だと思うのです。そういうことの知識がないと、何かいつもと違うことが発生したときよけいな心配を持つのです。東海村の事故の時も、私の所属している広島大学原爆放射能医学研究所にもいろいろな問い合わせがありました。私たちも逐一それに対応したんですが、中には放射線被曝ではあり得ない症状をおこしてしまった人がいる。たとえば皮膚がただれたり、胃が痛んだり、下痢が発生したりと、放射線の専門家からみるとあり得ない。でもあの事故が引き金となっていることは確かだろうと。何が来たのか?放射線の精神的なストレスといった、こういうものから来ているケースもある。日本の事故だけでなくチェルノブイリその他でも同じようなことが起こっています。
- A:第一部では専門的な言葉もずいぶん出てきます。2部では被爆地におけるいろいろな取り組み等で、物語的にも読んでいただけると思いますので、ご覧いただこうと思います。高田さん、今日はどうもありがとうございました。
- T:ありがとうございました。
- A:今日は広島大学原爆放射能医学研究所助教授の高田純さんにお話をうかがいました。「世界の被爆地調査」という本をご紹介しました。講談社のブルーバックスから出版されています。