放射線防護情報センター 2011.3.29
第二版 2011.4.5
ヨウ素131を体内に取り込んだ人の喉元の線量率の値から、甲状腺の線量を評価する方法を科研費で研究していた1、2)。その報告は平成13年。今回、その方法にて、福島県内の子どもたちの甲状腺線量を評価した。線量率測定は、現地対策本部が3月25日に発表した福島県川俣町66人の子どもらの値である2)。最大値は、12歳の男児であった。
その線量率が環境のバックグランド値を差し引いた正味線量率ならば、その男児の甲状腺に蓄積したヨウ素131の放射能は1.4キロベクレル、実効線量は1ミリグレイ以下と評価される*。この男児の内部被曝線量はレベルEの安全範囲にあり、甲状腺がんなどのリスクは無視でき、心配はいらない。
なお、1986年のチェルノブイリ事故時の最大の甲状腺線量は、福島の最大値の10万倍レベルの3グレイであった5)。2002年までに4000人の子どもたちに甲状腺がんが発生したが4)、この線量評価から、今回の福島県では、発生のリスクはないと予測する。
福島の核災害による甲状腺のリスクが低い理由としては、1)環境に放出された放射性ヨウ素の総量がチェルノブイリ事故にくらべけた違いに低い5)、2)汚染牛乳の出荷停止措置が速やかに実行された、ことによると考えられる。なお、放射性ヨウ素の半減期は8日と短く、80日後の放射能は1000分の一に低下するので、酪農業の再開もできる。チェルノブイリ事故時の甲状腺線量の80%は、汚染牛乳の摂取にあった4)。
* 甲状腺近傍の線量率から推定されるヨウ素131放射能値をもとにした、暫定的な実効線量の評価。